技術士第二次試験の実務経験証明書で、多くの受験者が最初につまずくのが業務経歴欄です。書ける行数は5行しかなく、そこに受験資格に必要な期間分をすべて収めたうえで、1つだけ「詳細」欄に○を付ける必要があります。この記事では、令和8年度の受験申込み案内(記入要領)の原文にそって、形式ルールと業務の選び方を整理します。
業務経歴欄は「5行に収める」ことが前提
記入要領には、業務経歴について次のように書かれています。
受験する技術部門及び選択科目を中心に科学技術に関する業務について、簡潔にわかりやすく整理して枠内に記入する。
業務経歴が記入しきれない場合は、主な業務の抜粋又は複数年の業務をまとめる等して、指定の行数に記入する。必ず受験資格の要件として必要な期間分は記入する。
つまり、経歴をすべて列挙することは求められていません。求められているのは「抜粋する」「まとめる」という編集です。20年の実務があるなら、5行に圧縮する前提で設計します。同じ勤務先・同じ分野の業務が数年続いているなら、それを1行にまとめてしまってかまいません。
一方で、受験資格の要件として必要な期間分は必ず記入します。ここを削ってしまうと、内容以前に受験資格の確認ができなくなります。
形式で落とさないための4つのルール
記入要領で明示されている形式ルールは次のとおりです。
| ルール | 原文の要点 |
|---|---|
| 順序と重複 | 期間が重複しないよう業務経歴を年代順に記入する |
| 年月の表記 | 在職期間は西暦で記入する(申込書全体で年月はすべて西暦) |
| 最終行の月 | 従事期間は受験申込書の提出日現在で計算するため、最終行を「〜2026年4月」とすると当該月を1ヶ月分として計算できない。「〜2026年3月」と記入する |
| 合計年数 | 大学院の在学期間(上限2年)と従事期間の合計年数を記入する。業務経歴を一部省略した場合、省略した業務経歴の年月は含めない |
最終行の月は特に間違えやすいところです。令和8年度は4月1日から4月15日が郵送受付期間ですから、その期間に出す人の最終行は「〜2026年3月」で締めるのが基本形になります。受付期間と提出後の扱いは「技術士二次 受験申込の期間(郵送4/1〜15・WEB4/14まで)と提出後は訂正できないこと」にまとめています。
また、大学院の研究経歴を別欄に書く場合、業務経歴の期間と重複する大学院の研究内容は記載しないこと、海外の大学院の在学期間は業務経歴の期間から減じられないため記載しないことが、記入要領に明記されています。
受験経路によって「いつ以降」を書けるかが変わる
どの時点以降の業務を書けるかは、受験資格の経路によって異なります。
- 技術士補としての経験:技術士補登録年月日以降の、指導技術士を補助した業務経歴を記入します。「勤務先」は指導技術士の勤務先、「地位・職名」は「技術士補」と記入します。
- 監督者の下での経験:「技術士第一次試験に合格」又は「指定された課程を修了」以降の、監督者の下での業務経歴を記入します。
- 上記2つ以外の業務経験:「技術士第一次試験に合格」又は「指定された課程を修了」以前の業務経歴も記入することができます。
3つ目の経路だけは合格前・修了前の経歴も使えます。ここを知らずに直近数年だけで埋めてしまうと、書けたはずの主要業務を捨てることになります。
「詳細」欄に○を付ける業務は、条件が3つある
5行のうち1行に○を付け、その業務について720字の「業務内容の詳細」を書きます。記入要領の原文は次のとおりです。
業務経歴の中から、受験申込書に記入した「専門とする事項」に関連するもので、「業務内容の詳細」に記入するものを1つ選び、「詳細」欄に○を付ける。
業務経歴の「詳細」欄に○を付した業務経歴の期間中に業務内容が複数にわたる場合は、その中から1つの業務を選んで記入する。
ここから読み取れる条件は3つです。第一に、「専門とする事項」に関連していること。第二に、選ぶのは1つだけであること。第三に、○を付けた行が複数年をまとめた行で、その期間に複数の業務が含まれる場合も、詳細に書くのは1業務に絞ること。
「専門とする事項」との関連は、この欄の入口の条件です。専門とする事項そのものの決め方は「「専門とする事項」の決め方— 選択科目の内容から30字以内で書き、業務内容と整合させる」で扱っています。
どの業務を選ぶか— 口頭試験から逆算する
条件を満たす業務が複数ある場合、どれを選ぶべきか。判断材料は口頭試験にあります。受験申込み案内は、口頭試験について「筆記試験における記述式問題の答案及び業務経歴を踏まえ実施する」と明記しています。○を付けた業務は、12月以降の口頭試験で試験官が手元に持っている資料そのものです。
試問事項は①マネジメント、評価(30点)、②コミュニケーション、リーダーシップ(30点)、③技術者倫理(20点)、④継続研さん(20点)で、各項目60%以上の得点が必要です。①と②は業務の話から問われます。そこで、次の観点で候補を比較すると選びやすくなります。
- 立場と役割を自分の言葉で説明できるか:担当した範囲が曖昧な業務は、マネジメントと評価の質問で説明が濁ります。
- 関係者が複数いたか:発注者、地元、社内他部署、協力会社など利害の異なる相手が登場する業務は、コミュニケーションとリーダーシップの材料になります。
- 技術的な判断を自分で下したか:課題に対して選択肢を比較し、根拠を持って選んだ場面があるかどうか。
- 成果を検証したか:やりっぱなしではなく、結果を評価して次に活かした経緯があるか。
規模の大きさや知名度で選ぶ必要はありません。説明できる業務のほうが強い、というのがこの欄の性質です。この逆算の考え方は「受験申込書は口頭試験の台本になる— 試問事項4項目から逆算して業務経歴票を書く」で詳しく扱っています。選んだあとの720字の構成は「業務内容の詳細(720字)の構成: 目的・立場と役割・技術的内容及び課題・技術的成果」を参照してください。
業務経歴証明欄で足元をすくわれない
業務経歴は所属長等の証明を受ける欄とセットです。記入要領では、証明者の電話番号(日中連絡が取れる番号)と、所属する企業・団体のドメインのメールアドレスによる証明を受けることとされています。フリーメールやキャリアメールは不可です。押印は不要です。
そして重要な注意が併記されています。
なお、事実と異なる記載が判明した場合、一定期間の受験禁止や合格が取り消される場合があります。
盛る動機が働きやすい欄だからこそ、明記されています。担当していない役割を書かないことは、倫理の問題であると同時に、口頭試験で自分が答えられなくなるという実務上の問題でもあります。
なお、過去の技術士第二次試験受験票や合格証など所定の書類を添付すれば、証明欄の記入を省略できます。ただしその場合も、業務経歴と業務内容の詳細は必ず記入します。
提出前の確認が最後のチャンス
受験申込み案内は、提出後について次のように定めています。技術部門・選択科目・専門とする事項・「併願」扱いの変更は理由のいかんにかかわらずできず、業務経歴・業務内容の詳細の加筆・訂正もできません。
提出前であれば、記入を誤った場合は当該箇所に二重線を引き、余白に正しい事項を記入します。訂正印は不要です。直せるのは投函するまでです。5行の順序、年月、○を付けた行、この3点は封をする前にもう一度確認してください。