技術士第二次試験の受験申込書は、4月に提出して終わる書類ではありません。筆記試験に合格した人にとっては、12月上旬から翌年1月中旬に行われる口頭試験で、試験官が手元に置いて読む資料になります。この構造を知って書くかどうかで、8ヶ月後の準備の重さが変わります。

「業務経歴を踏まえ実施する」は案内の原文

推測ではありません。令和8年度の受験申込み案内は、口頭試験について次のように書いています。

技術士としての適格性を判定することに主眼をおき、筆記試験における記述式問題の答案及び業務経歴を踏まえ実施するものとし、次の内容について試問します。なお、業務経歴等の内容を確認することがありますが、試問の意図を考え簡潔明瞭にご回答ください。

口頭試験の材料は2つと明記されています。筆記試験の記述式答案と、業務経歴です。筆記答案は7月に書いたものですが、業務経歴は4月に自分で書いて出したものです。つまり、口頭試験の題材の半分は、受験者自身が事前に指定できます。

さらに「業務経歴等の内容を確認することがあります」とあります。書いた内容について確認の質問が来ることは、案内が予告している範囲の話です。

試問事項と配点— 何を確認される場か

試問事項は次のとおりです。各項目60%以上の得点で合格とされています。

区分試問事項配点
Ⅰ 技術士としての実務能力① マネジメント、評価30点
Ⅰ 技術士としての実務能力② コミュニケーション、リーダーシップ30点
Ⅱ 技術士としての取組姿勢③ 技術者倫理20点
Ⅱ 技術士としての取組姿勢④ 継続研さん20点

試問時間は20分(10分程度延長の場合もあり)です。配点と合否基準の詳細は「技術士二次 口頭試験の試問事項と配点(令和8年度)— 4項目すべて60%の意味」で扱っています。

ここで重要なのは、①と②が合計60点、つまり全体の60%を占めているという点です。そして①と②は、抽象的な理念ではなく、あなたが実際に担当した業務を通じて確認されます。その業務を指定しているのが、業務経歴票の「詳細」欄に○を付けた1行です。

720字の4見出しは、試問事項に対応している

「業務内容の詳細」の記入要領には、書くべき項目が例示されています。

業務経歴の「詳細」欄に○を付したものについて、業務内容の詳細(「目的」、「立場と役割」、「技術的内容及び課題」、「技術的成果」など)を、受験申込書に記入した「専門とする事項」を踏まえ、720字以内(図表は不可。半角文字も1字とする。)で、簡潔にわかりやすく整理して枠内に記入する。

この4つの見出しは、試問事項と自然に対応します。

720字にコミュニケーションやリーダーシップを直接書く欄はありません。しかし、関係者が登場する書き方をしておけば、口頭で「この業務のステークホルダーは誰でしたか」と聞かれたときに、申込書と矛盾しない答えが出てきます。逆に、関係者がまったく登場しない720字を書くと、②の30点を白紙から組み立てることになります。

720字そのものの構成手順は「業務内容の詳細(720字)の構成: 目的・立場と役割・技術的内容及び課題・技術的成果」を参照してください。

実際に聞かれている質問の型

日本技術士会の公表資料は個々の質問文を公開していませんが、建設部門の受験者による口頭試験の再現記録(SUKIYAKI塾の体験記PDF、令和3年度から令和6年度)を通読すると、業務経歴票を出発点とする質問の型が繰り返し現れます。

最後の型は見落とされがちです。○を付けていない4行についても、用語や効果を聞かれることがあります。5行のうち説明できない業務を1行でも混ぜると、そこが質問される可能性が残ります。冒頭説明の組み立て方は「冒頭「経歴と業務内容を3分で」— 構成テンプレと時間配分」で扱っています。

4月に出したものは、12月に直せない

この逆算が効くのは、申込書が事後に修正できないからです。受験申込み案内は次のように定めています。

受験申込書提出後は、技術部門・選択科目・専門とする事項・「併願」扱いの変更は理由のいかんにかかわらずできません。また、業務経歴・業務内容の詳細の加筆・訂正もできません。

筆記試験の手応えを見てから業務を差し替えることも、口頭試験の直前に表現を整えることもできません。4月15日に投函した文面のまま、8ヶ月後の試験室に持ち込まれます。

裏を返せば、口頭試験の準備は4月から始められるということです。書いた時点で、①と②で何を語るかは自分で決まっています。

書くときのチェックリスト

申込書を口頭試験の台本として点検するなら、次の問いに答えられるかを確認してください。

  1. ○を付けた業務について、なぜこれを選んだかを1分で説明できるか。
  2. 720字に書いた技術的判断について、なぜ他の選択肢ではなかったかを説明できるか。
  3. 書いた成果を、どの指標で、いつ検証したかを言えるか。
  4. その業務の関係者を3者以上挙げ、それぞれとどう意思疎通したかを言えるか。
  5. 5行すべての経歴について、用語の意味と業務の効果を説明できるか。
  6. 720字の内容が、記入した「専門とする事項」を踏まえていると自分で説明できるか。

どれか1つでも詰まるなら、それは12月に詰まる場所です。○を付ける業務の選び方は「技術士二次 業務経歴5行の書き方と「詳細」欄に○を付ける業務の選び方」で扱っています。

なお、口頭試験は東京都で実施され、試験の日時・会場は筆記試験の合格通知・成績通知と併せて郵送で通知されます。試験日時の指定・変更は一切できません。準備の期間は、11月上旬の筆記合格発表から自分の試験日までしかない、と見込んでおくのが安全です。