受験申込書の「専門とする事項」は、たった30字の欄です。しかし提出後は理由のいかんにかかわらず変更できず、業務経歴票の「詳細」欄に○を付ける業務の条件にも、720字の書き方にも影響します。技術部門・選択科目と同じ重さで扱うべき欄です。
記入要領の原文— どこから言葉を持ってくるか
令和8年度の受験申込み案内は、記入要領で次のように定めています。
専門とする事項は、専門として行っている業務の内容を選択科目表の中の“選択科目の内容”の事項又は同程度の事項を30字以内で簡潔に記入する。
要点は3つです。
- 出どころは「選択科目の内容」:自由記述ではありません。案内に掲載されている技術部門・選択科目表の「選択科目の内容」に書かれている事項、又は同程度の事項から選びます。
- 実際に行っている業務であること:「専門として行っている業務の内容」と書かれています。願望や今後やりたい分野ではありません。
- 30字以内:長い説明文は入りません。名詞句で簡潔に書きます。
案内の記入例では、建設部門・土質及び基礎を受験する例で専門とする事項が「地盤」、建設部門・トンネルの併願例で「地中構造物」と記入されています。いずれも短い名詞句です。
建設部門の「選択科目の内容」を見る
言葉の出どころを具体的に確認します。建設部門の選択科目とその内容は、受験申込み案内では次のように記載されています(要約せず、内容の文言をそのまま示します)。
| 選択科目 | 選択科目の内容 |
|---|---|
| 土質及び基礎 | 土質調査並びに地盤、土構造、基礎及び山留めの計画、設計、施工及び維持管理に関する事項 |
| 鋼構造及びコンクリート | 鋼構造、コンクリート構造及び複合構造の計画、設計、施工及び維持管理並びに鋼、コンクリートその他の建設材料に関する事項 |
| 都市及び地方計画 | 国土計画、都市計画(土地利用、都市交通施設、公園緑地及び市街地整備を含む。)、地域計画その他の都市及び地方計画に関する事項 |
| 河川、砂防及び海岸・海洋 | 治水・利水計画、治水・利水施設及び河川構造物の調査、設計、施工及び維持管理、河川情報、砂防その他の河川に関する事項/地すべり防止に関する事項/海岸保全計画、海岸施設・海岸及び海洋構造物の調査、設計、施工及び維持管理その他の海岸・海洋に関する事項/総合的な土砂管理に関する事項 |
| 港湾及び空港 | 港湾計画、港湾施設・港湾構造物の調査、設計、施工及び維持管理その他の港湾に関する事項/空港計画、空港施設・空港構造物の調査、設計、施工及び維持管理その他の空港に関する事項 |
| 電力土木 | 電源開発計画、電源開発施設、取放水及び水路構造物その他の電力土木に関する事項 |
| 道路 | 道路計画、道路施設・道路構造物の調査、設計、施工及び維持管理・更新、道路情報その他の道路に関する事項 |
| 鉄道 | 新幹線鉄道、普通鉄道、特殊鉄道等における計画、施設、構造物その他の鉄道に関する事項 |
| トンネル | トンネル、トンネル施設及び地中構造物の計画、調査、設計、施工及び維持管理・更新、トンネル工法その他のトンネルに関する事項 |
| 施工計画、施工設備及び積算 | 施工計画、施工管理、維持管理・更新、施工設備・機械・建設ICTその他の施工に関する事項/積算及び建設マネジメントに関する事項 |
| 建設環境 | 建設事業における自然環境及び生活環境の保全及び創出並びに環境影響評価に関する事項 |
この文言を見ると、「専門とする事項」に使える語がそのまま並んでいることがわかります。たとえばトンネルなら「地中構造物」「トンネル工法」、道路なら「道路計画」「道路構造物の維持管理」、建設環境なら「環境影響評価」といった具合です。各科目の性格は「建設部門の選択科目11科目と科目別の特徴」で扱っています。
なお、案内は「同程度の事項」も認めています。選択科目の内容に一字一句同じ語がなくても、同じ粒度・同じ範囲の語であれば記入できます。ただし、粒度を上げすぎると次に述べる整合が取りにくくなります。
粒度の決め方— 広すぎても狭すぎても困る
30字あるからといって説明を詰め込む必要はありません。実務上は、次の2つの失敗が起きやすいところです。
広すぎる場合。たとえば選択科目名をそのまま書き写すような書き方をすると、「専門として行っている業務の内容」を示したことになりません。選択科目は既に別欄で書いています。この欄はその内側の、あなたが実際に手を動かしている領域を示す欄です。
狭すぎる場合。特定の工法名や特定の製品名まで絞り込むと、業務経歴5行のうち○を付ける業務がその1つに限定され、選択の幅がなくなります。また、口頭試験でその狭い領域の深い質問だけを想定することになり、準備が窮屈になります。
目安としては、選択科目の内容に列挙されている語のうち、自分の業務経歴5行の大半が当てはまる範囲の語を選ぶことです。
3つの欄の整合が採点の前提になる
「専門とする事項」は単独で完結しません。記入要領は、他の2つの欄との関係を明示しています。
まず業務経歴です。
業務経歴の中から、受験申込書に記入した「専門とする事項」に関連するもので、「業務内容の詳細」に記入するものを1つ選び、「詳細」欄に○を付ける。
○を付ける業務は「専門とする事項」に関連していなければなりません。専門とする事項を先に決めておかないと、○を付ける行が決まらないという順序関係です。
次に業務内容の詳細です。
業務経歴の「詳細」欄に○を付したものについて、業務内容の詳細(「目的」、「立場と役割」、「技術的内容及び課題」、「技術的成果」など)を、受験申込書に記入した「専門とする事項」を踏まえ、720字以内(図表は不可。半角文字も1字とする。)で、簡潔にわかりやすく整理して枠内に記入する。
720字は「専門とする事項を踏まえ」書くこととされています。つまり、次の3つが一本の線でつながっている必要があります。
- 選択科目 → その内容に含まれる語から選んだ「専門とする事項」
- 「専門とする事項」に関連する業務経歴の1行(○を付ける行)
- その業務について、専門とする事項を踏まえて書く720字
ここがずれていると、口頭試験で「なぜこの業務を業務内容の詳細として取り上げたのか」と問われたときに、答えが苦しくなります。書く順序と選び方は「技術士二次 業務経歴5行の書き方と「詳細」欄に○を付ける業務の選び方」、720字の組み立ては「業務内容の詳細(720字)の構成: 目的・立場と役割・技術的内容及び課題・技術的成果」で扱っています。
総合技術監理部門と併願する場合
総合技術監理部門と他の技術部門を「併願」で申し込む場合、記入要領は2つの申込書の関係を次のように定めています。「選択科目」を対応させて、「受験地」及び「専門とする事項」は同一のものを記入します。
案内に挙げられている例は、総合技術監理部門と建設部門/トンネルの併願です。申込書1が技術部門「建設」・選択科目「トンネル」、申込書2が技術部門「総合技術監理」・選択科目「建設-トンネル」で、受験地は両方「宮城県」、専門とする事項は両方「地中構造物」となっています。
また、総合技術監理部門を「選択科目免除」で申し込む場合は、既に合格している技術部門/選択科目に対応した選択科目名を記入します。案内の例では、環境部門/環境測定の合格者が、選択科目「環境-環境測定」、専門とする事項「環境測定分析」と記入しています。
一度出したら変えられない
受験申込み案内は、提出後の扱いを明確にしています。
受験申込書提出後は、技術部門・選択科目・専門とする事項・「併願」扱いの変更は理由のいかんにかかわらずできません。
30字の欄が、技術部門や選択科目と並んで変更不可の列に入っています。提出前であれば、記入を誤った場合は当該箇所に二重線を引き、余白に正しい事項を記入できます(訂正印は不要)。受付期間と提出後の手続きは「技術士二次 受験申込の期間(郵送4/1〜15・WEB4/14まで)と提出後は訂正できないこと」にまとめています。
30字を決めるのは、書き始める最初の作業です。ここが決まれば、○を付ける業務も、720字の焦点も、口頭試験で守るべき領域も、同時に決まります。