受験申込書の中で、書き方を最も迷うのが「業務内容の詳細」です。720字という枠だけが決まっていて、何をどの順で書くかは自分で決めることになります。ただし記入要領の原文を読むと、書くべき要素も、押さえるべき制約も、思ったより具体的に指定されています。まず原文を確認します。

記入要領の原文

令和8年度の受験申込み案内、受験申込書等記入要領の「⑤ 業務内容の詳細(必ず記入すること。)」には次のように書かれています。

業務経歴の「詳細」欄に○を付したものについて、業務内容の詳細(「目的」、「立場と役割」、「技術的内容及び課題」、「技術的成果」など)を、受験申込書に記入した「専門とする事項」を踏まえ、720字以内(図表は不可。半角文字も1字とする。)で、簡潔にわかりやすく整理して枠内に記入する。

続けて、次の指定があります。

業務経歴の「詳細」欄に○を付した業務経歴の期間中に業務内容が複数にわたる場合は、その中から1つの業務を選んで記入する。

短い文ですが、読み落としやすい点が4つあります。

4つの要素には「など」が付いている。 「目的」「立場と役割」「技術的内容及び課題」「技術的成果」は例示であって、この4つ以外を書いてはいけないとは書かれていません。一方で、記入要領に添えられた記入例の枠は「目的」「立場と役割」という見出しを立てた形になっています。この4つを見出しにして構成するのは、要領に沿った素直な選択です。

「専門とする事項」を踏まえることが条件。 申込書に書いた専門とする事項と、詳細に書く業務の中身がずれていると、この一文に反します。

書くのは1業務だけ。 業務経歴の1行が複数年をまとめたもので、その期間に複数の業務があったとしても、詳細に書くのは1つです。

「詳細」欄に○を付けるのは、業務経歴の中から1つ。 業務経歴の欄には最大5行を記入し、その中から専門とする事項に関連するものを1つ選んで○を付けます。この選択がそのまま口頭試験の主題になります。

4つの要素に何を書くか

目的

その業務が何のために行われたかです。ここは2つの層に分けて書くと情報量が上がります。1つは発注者や社会の側の目的(何を実現するための事業だったか)、もう1つは技術的な目的(そのために技術者として何を達成する必要があったか)です。後者がないと、次の「技術的内容及び課題」との接続が切れます。

立場と役割

記入要領の記入例では、枠の見出しが「当該業務での立場、役割、成果等」となっています。書くべきは組織上の肩書だけではありません。技術者倫理のコンピテンシーは次のように定めています。

業務履行上行う決定に際して,自らの業務及び責任の範囲を明確にし,これらの責任を負うこと。

つまり「自分が何を決めたのか」を書く欄だと考えるのが実務的です。立場に加えて、どの範囲の技術的判断が自分の裁量だったかを一文で書き切ります。ここが曖昧だと、口頭試験で「その判断はご自身がされたのですか」と確認されることになります。

技術的内容及び課題

720字の中で最も厚く書く部分です。順序としては、前提条件と制約を置き、次に何が技術的な課題だったかを定義し、最後に複数の選択肢の中からなぜその解を選んだかを書きます。

マネジメントのコンピテンシーは次のとおりです。

マネジメント:業務の計画・実行・検証・是正(変更)等の過程において,品質,コスト,納期及び生産性とリスク対応に関する要求事項,又は成果物(製品,システム,施設,プロジェクト,サービス等)に係る要求事項の特性(必要性,機能性,技術的実現性,安全性,経済性等)を満たすことを目的として,人員・設備・金銭・情報等の資源を配分すること。

相反する要求事項の間で何を優先し、何を犠牲にしたかが書かれていれば、口頭試験の①マネジメント、評価の試問に自然につながります。逆に「基準に従って設計した」だけでは、判断の跡が残りません。

技術的成果

達成した結果を、できるだけ定量的に書きます。加えて、評価のコンピテンシーが次のように波及効果まで求めていることを意識します。

評価:業務遂行上の各段階における結果,最終的に得られる成果やその波及効果を評価し,次段階や別の業務の改善に資すること。

その業務の中で完結した成果だけでなく、その後の別の業務や組織の標準にどう反映したかを一文入れておくと、④につながる質問の受け皿になります。

字数配分の一例

記入要領は配分を定めていません。以下はあくまで一例です。

要素字数の一例
目的80〜120字
立場と役割80〜120字
技術的内容及び課題350〜420字
技術的成果120〜180字

技術的内容及び課題に半分以上を割いているのは、ここが技術士としての判断を示す唯一の場所だからです。

構成例(骨格のみ)

以下は構成の骨格を示す例であり、実在する合格者の答案ではありません。丸括弧内はすべてプレースホルダで、固有名詞・数値は入れていません。

「【目的】本業務は、(対象施設の種別)における(課題となっていた状態)を解消し、(達成すべき機能)を確保することを目的とした(業務の種別)である。

【立場と役割】私は(立場・職名)として、(担当範囲)の技術的検討を担当し、(自分が決定した事項)を決定する立場にあった。

【技術的内容及び課題】(前提条件・制約条件)という条件下で、(技術的に達成すべき水準)を満たす必要があった。(選択肢A)は(Aの難点)、(選択肢B)は(Bの難点)があったため、(判断根拠となる検討・試算)を行い、(採用した解)を採用した。あわせて(リスク要因)に対し(対策)を講じた。

【技術的成果】(定量的な成果)を達成し、(副次的効果)が得られた。本検討で用いた(手法)は、その後(適用先)にも展開している。」

この720字が口頭試験の台本になる

受験申込み案内は、口頭試験について「筆記試験における記述式問題の答案及び業務経歴を踏まえ実施するものとし」と定めています。試験官の手元にあるのは、あなたが書いたこの720字です。再現記録に現れる「なぜこの業務を取り上げたのですか」「その技術的判断の理由は」「成果はどう検証しましたか」といった質問も、いずれも720字の中の一文を指して聞かれます。

書き終えたら一文ずつ「なぜ」と自問し、答えられない文がないかを確認してください。答えられない文は、書かないほうが安全です。

提出後は直せない

受験申込み案内のⅥ.受験申込み後の注意事項には、次のとおり明記されています。

受験申込書提出後は、技術部門 ・ 選択科目・専門とする事項 ・「併願」扱いの変更は理由のいかんにかかわらずできません。また、業務経歴 ・ 業務内容の詳細の加筆・訂正もできません。

4月に提出した720字が、12月以降の口頭試験まで変えられないまま残ります。書く段階で口頭試験を想定しておくことが、そのまま得点の下地になります。

字数の数え方と削る手順は業務内容の詳細 720字の数え方と削る技術、この720字を口頭でどう話すかは口頭試験の冒頭「経歴と業務内容の詳細を3分で」、試問事項と配点の全体像は技術士二次 口頭試験の試問事項と配点(令和8年度)で扱っています。