口頭試験は、部屋に入って着席した直後に「まず、これまでの経歴と業務内容の詳細を3分程度で説明してください」と切り出されることが多い試験です。指定される時間は1分のことも5分のこともあり、事前に知ることはできません。ここでは、この冒頭の説明をどう組み立てるかを、受験申込み案内の原文とコンピテンシーの定義から整理します。
なぜ冒頭で経歴を聞かれるのか
令和8年度の受験申込み案内は、口頭試験について次のように書いています。
技術士としての適格性を判定することに主眼をおき、筆記試験における記述式問題の答案及び業務経歴を踏まえ実施するものとし、次の内容について試問します。なお、業務経歴等の内容を確認することがありますが、試問の意図を考え簡潔明瞭にご回答ください。
試問の土台は「筆記試験の答案」と「業務経歴」です。つまり試験官の手元には、あなたが受験申込書に書いた業務経歴と業務内容の詳細(720字)があります。冒頭の説明は、その紙面と本人の話が一致するかを確認し、以降20分の試問の入口を作るための質問だと考えると、何を話すべきかが決まります。
なお、原文の但し書き「試問の意図を考え簡潔明瞭にご回答ください」は、冒頭の説明にもそのまま当てはまります。長く話すことが評価されるわけではありません。
SUKIYAKI塾に公開されている令和3〜6年度・建設部門の再現記録6本では、6本中4本でこの冒頭質問が出ています。指定された時間は「1分」「5分以内」「2分半程度」「3分程」とばらついていました。残る2本は本人が「経歴表への説明や、筆記試験のⅡがB評価だったため、筆記試験回答への質問も準備していましたが、求められませんでした」「経歴や業務内容の詳細の説明は求められず」と書いており、冒頭説明が省かれていきなり試問に入る場合もあります。
「何分」と言われても崩れない作り方
時間指定が読めない以上、3分版だけを暗記していくと、1分と言われた瞬間に構成が壊れます。対策は、削っても意味が通る入れ子構造で作っておくことです。
| 指定 | 話す範囲 |
|---|---|
| 1分 | 経歴の流れ(何年・どの分野)+ 詳細業務の目的と技術的成果だけ |
| 2分 | 上記+ 立場と役割 |
| 3分 | 上記+ 技術的内容及び課題(なぜその解を選んだか) |
| 5分 | 上記+ 経歴の各段階で何を担当したかの補足 |
核は「詳細業務の目的と成果」です。ここを最初に置き、外側に情報を足していく順で作ると、どの指定でも同じ骨格で話せます。
3分版の構成テンプレ
受験申込書の記入要領は、業務内容の詳細に書く要素として「目的」「立場と役割」「技術的内容及び課題」「技術的成果」を挙げています(原文では「など」が付いた例示です)。冒頭の説明もこの並びに揃えると、試験官が手元の紙面を追いながら聞けます。
| パート | 内容 | 3分での比重 |
|---|---|---|
| 経歴の流れ | 入社年、従事年数、担当してきた分野の変遷 | 短く |
| 専門とする事項 | 申込書に書いた「専門とする事項」と経歴の一致 | 一言 |
| 詳細業務・目的 | 何のための業務か(発注者側の目的と技術的目的) | 中 |
| 詳細業務・立場と役割 | 組織上の立場と、自分が意思決定した範囲 | 中 |
| 詳細業務・技術的内容及び課題 | 制約条件と、なぜその解を選んだか | 最も厚く |
| 詳細業務・技術的成果 | 定量的な結果と、次にどう活かしたか | 中 |
時間配分は「字数」ではなく実測で決める
3分で話せる分量は人によって違います。目安の字数を当てにせず、原稿を書いたら実際に声に出して計測し、そこから削るか足すかを決めてください。計測は本番と同じ「初対面の相手に、ゆっくりはっきり」の速さで行います。手元の原稿を黙読した時間で判断すると、本番では確実に超過します。
計測したら、原稿のどこに1分・2分・3分の区切りが来るかを紙に印を付けておきます。本番で指定された時間に合わせて、その印までで止められるようにするためです。
構成例(骨格のみ)
以下は構成の骨格を示すための例であり、実在する合格者の答案ではありません。丸括弧内はすべてプレースホルダで、固有名詞・数値は入れていません。
「(西暦)年に(勤務先の種別)に入社し、以来(年数)年間、(専門とする事項)に関する業務に従事してまいりました。前半の(年数)年間は(分野)の(設計・施工管理などの区分)を担当し、その後(年数)年間は(分野)を担当しております。
業務内容の詳細に記載したのは、(年)に担当した(業務の種別)です。この業務は(発注者側の目的)を目的としたもので、私は(立場・職名)として(自分が決定した範囲)を担当しました。
技術的な課題は(制約条件)の下で(達成すべき性能・条件)を満たすことでした。(選択肢A)と(選択肢B)を比較し、(判断根拠)から(採用した解)を採用しました。
結果として(定量的な成果)が得られ、この検討手法は(次の業務・組織)に反映しています。」
冒頭で話したことが、そのまま深掘りの的になる
再現記録を見ると、冒頭の説明が終わった直後に来るのは次のような質問です。
- なぜこの業務を「業務内容の詳細」として取り上げたのですか
- その技術的判断をした理由は何ですか
- 成果はどのように検証しましたか
- この業務のステークホルダーは誰でしたか
つまり、冒頭で自分から出した情報が質問の材料になります。裏を返せば、深掘りされたときに答えられる論点だけを冒頭に置くという設計ができます。用語だけ出して中身を説明できないものは、冒頭から外してください。
避けたいこと
申込書に書いていないことを足す。 受験申込み案内は「業務経歴・業務内容の詳細の加筆・訂正もできません」と定めています。提出した720字が唯一の正です。口頭で別の話を足すと、紙面との食い違いを確認する質問に時間を取られます。
時間超過。 試問時間は20分(10分程度延長の場合もあり)です。冒頭で使いすぎると、配点のある4項目に割く時間が減ります。
専門用語を並べて終わる。 試験官があなたの現場の社内用語を知っているとは限りません。原文の「簡潔明瞭に」に沿って、判断と根拠を平易に言い切るほうが通ります。
より詳しい試問事項と配点の構造は技術士二次 口頭試験の試問事項と配点(令和8年度)を、冒頭説明の元になる720字の作り方は業務内容の詳細(720字)の構成を、当日までの日程は口頭試験の日程・通知・当日の流れをご覧ください。