技術士第二次試験の口頭試験について公式資料で確定しているのは、試問事項4項目と配点・各項目60%以上という合否決定基準・試問時間20分・材料は筆記答案と業務経歴・試験中の資料参照不可・会場は東京都・日時の変更不可の7つだけです。質問文も模範解答も採点基準の内訳も公表されていません。だから対策の中身は、4項目それぞれで60%以上を示す材料を自分が提出した受験申込書から作ることに収束します。

この記事は、令和8年度の筆記試験を受け終えて、合格発表(11月4日予定)を待ちながら口頭試験の準備を始めたい人に向けて書いています。根拠は受験申込み案内・実施大綱・日本技術士会の公式FAQの原文と、受験者本人が公開している再現記録の実数だけです。

先に断っておくと、この記事に模範解答は出てきません。採点結果は開示されず、合格答案も公表されていないためです。書けるのは、公式に決まっている枠と、実際に何が起きたかの実数、その2つから導ける準備の順番だけです。

口頭試験の対策で公式に決まっているのは、この7つだけ

対策を組む前に、確定している枠を並べます。次の7つ以外に、公式資料に書かれていることはありません。

#確定していること出典
1試問事項は4項目(マネジメント、評価/コミュニケーション、リーダーシップ/技術者倫理/継続研さん)受験申込み案内・実施大綱
2配点は30点・30点・20点・20点実施大綱 ⑶②
3合否決定基準は4項目それぞれ60%以上の得点受験申込み案内 Ⅷ章
4試問時間は20分(10分程度延長の場合もあり)実施大綱 ⑵③・受験申込み案内
5試問の材料は筆記試験の記述式答案と業務経歴実施大綱 ⑵②
6試験中に資料等は参照できない公式FAQ Q2
7会場は東京都、日時・会場は通知で指定され変更できない受験申込み案内 Ⅲ・公式FAQ Q1

このうち5番と4番が、対策の設計を決めます。実施大綱の原文は次のとおりです。

② 口頭試験は、技術士としての適格性を判定することに主眼をおき、筆記試験における記述式問題の答案及び業務経歴を踏まえ実施するものとし、筆記試験の繰り返しにならないよう留意する。 ③ 試問事項及び試問時間は、次のとおりとする。なお、試問時間を10分程度延長することを可能とするなど受験者の能力を十分確認できるよう留意する。

出典: 令和8年度 技術士第二次試験実施大綱(科学技術・学術審議会 技術士分科会試験部会)

読み落とされやすいのは、筆記試験の繰り返しにならないよう留意すると書かれている点です。専門知識をもう一度詰め込む勉強は、公式の設計上、口頭試験の対策ではありません。問われるのは、自分が実際にやった業務を4項目の枠で語れるかどうかです。

配点も大綱に明記されています。

Ⅰ 技術士としての実務能力 1.マネジメント、評価 30点満点 2.コミュニケーション、リーダーシップ 30点満点 Ⅱ 技術士としての取組姿勢 3.技術者倫理 20点満点 4.継続研さん 20点満点

出典: 令和8年度 技術士第二次試験実施大綱(科学技術・学術審議会 技術士分科会試験部会)⑶② 口頭試験(総合技術監理部門を除く技術部門)

なお総合技術監理部門は試問事項が異なり、必須科目に対応して経歴及び応用能力と体系的専門知識が問われます。この記事は総合技術監理部門を除く技術部門を前提としています。

準備の順番は、4項目のうち最も材料が薄い項目から決まる

合否決定基準は総合点ではなく、4項目それぞれに60%以上が課されています。この一点だけで、準備の順番は機械的に決まります。この基準と通過率(令和7年度93.1%)を読み合わせて「厳しい」かどうかを数えたものは技術士 口頭試験は厳しいのか・落ちる人は何が違うのか — 各項目60%の構造と通過率93.1%で数えるにあります。

技術士としての実務能力 マネジメント、評価 60%以上の得点 コミュニケーション、リーダーシップ 60%以上の得点 技術士としての取組姿勢 技術者倫理 60%以上の得点 継続研さん 60%以上の得点

出典: 令和8年度 技術士第二次試験 受験申込み案内(日本技術士会)Ⅷ章 合否決定基準(総合技術監理部門を除く技術部門・口頭試験)

配点は「マネジメント、評価」と「コミュニケーション、リーダーシップ」が各30点、「技術者倫理」と「継続研さん」が各20点です。つまり合格ラインは総合点ではありません。計算すると、30点の項目は18点、20点の項目は12点が必要です。3項目で満点を取っても、1項目が59%なら不合格になります。

得意な項目を伸ばしても、他項目の不足を埋め合わせられない構造です。したがって準備は、よく聞かれそうな質問からではなく、手元の業務経歴と業務内容の詳細から材料を取り出せない項目から始めます。次の表を自分の申込書の控えに当てて、材料が出てこない行を先に埋めてください。

試問事項配点申込書のどこから材料を取るか材料が出てこないときの補い方
マネジメント、評価30点業務内容の詳細の立場と役割、および成果の後に何を振り返ったか業務経歴5行の他の業務から、人・物・金・情報の配分を決めた場面を拾う
コミュニケーション、リーダーシップ30点詳細に書いた関係者調整・合意形成の記述発注者・住民・協力会社など、利害の異なる相手が出てくる業務を選び直す
技術者倫理20点申込書には通常書かれていない技術士法の三義務二責務と、自分の業務で公益確保を優先した判断を結び付ける
継続研さん20点申込書には通常書かれていない直近の受講・学会・資格・社内展開の実績を年で並べる

技術者倫理と継続研さんの2項目は、業務の話をしているだけでは自然に出てきません。配点は20点ずつと軽く見えますが、落とせば即不合格という意味では30点の項目と同じ重みです。配点と基準の全体像は技術士第二次試験 口頭試験の試問事項と配点(令和8年度)— 4項目すべて60%の意味にまとめています。

令和8年度は試問事項の名称と順番が変わった

令和8年度の受験申込み案内と実施大綱では、試問事項の表記が令和7年度までと変わっています。区分Ⅱの名称が「技術士としての適格性」から「技術士としての取組姿勢」に変わり、区分Ⅰの①と②の順序が入れ替わりました。

令和7年度まで

Ⅱ 技術士としての適格性/① コミュニケーション、リーダーシップ/② 評価、マネジメント

令和8年度から

Ⅱ 技術士としての取組姿勢/① マネジメント、評価/② コミュニケーション、リーダーシップ

日本技術士会は公式FAQで、名称を変えた理由を次のように説明しています。

「口頭試験は、技術士としての適格性を判定することに主眼をおき、筆記試験における記述式問題の答案及び業務経歴を踏まえ実施する。」とされています。このため、試問事項の「技術士としての適格性」が重視され評価されると誤解を招くことがないよう表記を変更しました。 なお、試験内容については変更ありません。

出典: 日本技術士会「口頭試験に関する質問(第二次試験)」Q5

「試験内容については変更ありません」とあるとおり、聞かれる中身も配点も基準も変わりません。変わったのは表記と順番だけです。ただし市販の想定問答集・体験記・講座教材は令和7年度までの番号で書かれているため、番号で覚えると案内と食い違います。項目名で覚えてください。 改訂の全体像は令和8年度から適用のコンピテンシー改訂で扱っています。

合格発表を待たずにできる準備は2つある

準備期間は、通知された日程によって最短4週間から2か月以上まで開き、どちらに当たるかは通知が届くまで分かりません。発表前に済ませられる作業を先に片付けておく必要があるのはこのためです。

1つ目は、筆記答案の再現。 試問の材料は答案と業務経歴だと大綱に明記されている一方、答案そのものは返ってきません。

  • 採点結果の内容(答案用紙の開示を含む)に関する問合せには、一切応じません。
出典: 令和8年度 技術士第二次試験 受験申込み案内(日本技術士会)Ⅹ章

後から思い出そうとしても確認する手段がありません。選んだ問題番号と自分が書いた論旨を書き起こす作業は、記憶が残っている今しかできません。ただし、再現論文をどこまで作り込むべきかは別の問題です。公開されている再現記録11本のうち、筆記答案について聞かれたと本人が書いているのは1本でした。実数と準備量の目安は技術士 口頭試験で筆記答案は聞かれる?再現記録11本の実数と準備量にまとめています。

2つ目は、受験申込書の読み直し。 4月に提出した業務経歴と業務内容の詳細は提出後に訂正できず、そのまま試問の材料になります。控えを読み返し、書いていない前提・数値・経緯を口で説明できるか、使った専門用語を自分の言葉で言い換えられるかを確認します。申込書がなぜ口頭試験の台本になるのかは受験申込書は口頭試験の台本になる、720字の構成の考え方は業務内容の詳細(720字)の構成で扱っています。

発表後の4週間をどう配分するかは筆記合格発表(11月4日予定)から口頭試験までに日程ベースで整理しています。

当日の条件は3つ確定している — 東京都・日時変更不可・資料参照不可

日程と会場については、受験申込み案内に次のように書かれています。

(2)口頭試験[筆記試験合格者のみ] 令和8年 12月上旬 ~ 令和9年 1月中旬 ☆ 試験の日時・会場は、筆記試験合格通知・成績通知と併せて郵送により通知します。 ☆ 試験日時の指定・変更は一切できません。 (中略) 口頭試験は、東京都で実施します。試験会場は口頭試験の日時とともに通知します。

出典: 令和8年度 技術士第二次試験 受験申込み案内(日本技術士会)Ⅲ.2 試験日時・3 試験地・試験会場

日本技術士会の公式FAQも、日時の変更と試験室での資料参照について明確に答えています。

Q1:試験の日時を変更できますか。 一切変更できません。試験日時は、筆記試験の成績通知と併せてお知らせします。(11月上旬発送予定) Q2:口頭試験の試験室で資料等を参照することはできますか。 試験中に資料等は参照できません。

出典: 日本技術士会「口頭試験に関する質問(第二次試験)」Q1・Q2

対策として効いてくるのは「試験中に資料等は参照できません」のほうです。手元のメモを見ながら答えることはできないため、準備した内容は口に出して再生できる状態にしておく必要があります。書いて覚えるだけでは足りません。案内の原文にも「試問の意図を考え簡潔明瞭にご回答ください」とあり、長さではなく短く的確に届くことが求められています。想定質問に対して声に出し、時間を測る練習がここに直結します。

通知が届いてからの動きと当日の流れは令和8年度 技術士二次 口頭試験の日程・通知・当日の流れにまとめています。

再現記録11本が示すのは、想定問答集より自分の業務経歴が先だということ

質問文は公表されていないため、実際に何が聞かれたかは受験者本人が公開した再現記録から数えるしかありません。当サイトは、SUKIYAKI塾(pejp.net)に公開されている令和元年度〜令和6年度の記録のうち、本文を読み取れた11本を数えています。

数えた対象実数
再現記録の本数(令和元年度〜令和6年度・本文を読み取れたもの)11本
記録された質問の総数180問
総合技術監理部門を除く7本の質問数126問
うち試問事項4項目に直接対応する質問95問
うち業務の技術的な深掘りと受験動機31問
冒頭の経歴・業務内容の詳細の説明を求められた記録(建設部門6本中)4本
筆記答案について聞かれたと本人が書いている記録1本
所要時間(本人の記載がある10本)17分から25分ぐらい
試験官の人数2名が6本、3名が4本、明記なしが1本

126問のうち95問が4項目に対応し、残る31問が業務の深掘りと受験動機だったという配分は、業務経歴を踏まえ実施するという大綱の設計がそのまま実行されていることを示しています。質問集を先に暗記するより、自分の業務経歴から4項目の材料を取り出すほうが先です。 項目別の内訳と実際の聞かれ方は技術士 口頭試験で実際に聞かれた質問にまとめています。

所要時間が17分から25分ぐらいまで散らばっている点も、対策の前提になります。合否決定基準に時間の条項はないため、早く終わっても延長されても、それ自体は合否と関係ありません。実時間の分布は技術士 口頭試験が早く終わった・手応えがないで扱っています。

項目別の準備は、どの記事から読めばよいか

枠と順番が決まったら、あとは4項目それぞれの材料を作る作業です。項目ごとの聞かれ方と準備の手順は、次の記事に分けて書いています。

不合格だった場合に翌年以降の筆記試験の免除があるかは、公式FAQが一行で答えています。免除はありません。筆記合格者のうち最終合格に含まれない人は、令和5〜7年度で6〜7%です。

まとめ — 次に取る行動

  1. 受験申込書の控えを開き、4項目の表に当てる。 材料が出てこない行を特定する。技術者倫理と継続研さんは申込書に書かれていないため、ここが空欄になる人が多い
  2. 筆記答案の再現メモを、記憶が残っているうちに書き起こす。 答案は開示されず、後から確認する手段がない
  3. 空欄になった項目から、声に出して答える練習を始める。 試験中に資料等は参照できず、案内も簡潔明瞭な回答を求めている