口頭試験で不合格になると、翌年以降の筆記試験の免除はありません。次回は受験申込書の提出と受験手数料20,500円の納付からやり直し、7月の筆記試験を受け直すことになります。これは日本技術士会が公式FAQで「免除はありません」と明記していることです。
この記事は、口頭試験を終えて手応えがなく「落ちたかもしれない」と検索している人と、3月の発表で不合格だった人に向けて書いています。根拠は、制度については日本技術士会の公式FAQ・受験申込み案内・実施大綱の原文、合格率については文部科学省と日本技術士会が公表している人数だけです。講座サイトが示す口頭の合格率(8〜9割など)は出典が示されていないので使わず、公表値どうしの割り算で出した値を算出式つきで置きます。
先に結論を並べます。不合格なら筆記からやり直し。合否は4つの試問事項それぞれ60%以上で決まり、総合点はない。令和7年度は筆記合格者2,957人のうち最終合格が2,752人で、口頭試験の通過率は算出値で93.1%。そして、公開されている「不合格体験記」で質問を逐語で再現したものは、当サイトが確認した範囲では0本です。
不合格になったら翌年は筆記試験から — 免除は「ありません」
口頭試験で不合格になった場合、翌年以降に筆記試験が免除されることはありません。日本技術士会の公式FAQに、この質問がそのまま載っています。
Q4:口頭試験で不合格になった場合、翌年以降に筆記試験の免除はありますか。 免除はありません。
受験申込み案内のⅩ章「合格発表及び成績の通知」にも、同じことが欠席の場合を含めて書かれています。
筆記試験に合格しても、口頭試験で欠席・不合格の場合は、次回以降の技術士第二次試験では筆記試験から受験することになります。
「筆記試験から受験する」とは、具体的には次の手続きをもう一度行うことです。
- 受験申込書の提出。受験申込の期間は郵送が4月1日〜15日、WEBが4月14日までで、提出後は訂正できません。詳しくは技術士二次 受験申込の期間(郵送4/1〜15・WEB4/14まで)と提出後は訂正できないことを参照してください
- 受験手数料の納付。受験手数料は20,500円(非課税)です。案内のⅤ章に「払込み手続きが受験申込み受付期間に正常に完了していない場合は、受験申込書を受付することができません」とあります
- 7月の筆記試験。必須科目Ⅰと選択科目Ⅱ・Ⅲをすべて受け直します
つまり口頭試験の不合格は「翌年もう一度口頭を受ける」ではなく「翌年の4月に申込書を出すところから始める」という意味です。
なお、口頭試験の合否は令和9年3月中旬(3月12日(金)予定)の最終合格発表で分かります。案内には次のように書かれており、不合格でも成績は通知されます。
なお、受験者には、合否を問わず成績を通知します。 (中略) 採点結果の内容に関する問合せには、一切応じません。
「採点結果の内容に関する問合せには、一切応じません」とあるとおり、どの質問のどの答えが減点されたのかを試験機関に聞くことはできません。不合格の理由は、次の合否決定基準に自分で当てはめて考えるしかありません。
合否は4項目それぞれ60%以上 — 総合点はなく、1項目で決まる
口頭試験の合否決定基準は、4つの試問事項のそれぞれについて「60%以上の得点」です。合計点の基準はありません。受験申込み案内に掲載されている文部科学省の合否決定基準の該当箇所は次のとおりです。
技術士としての実務能力 マネジメント、評価 60%以上の得点 コミュニケーション、リーダーシップ 60%以上の得点 技術士としての取組姿勢 技術者倫理 60%以上の得点 継続研さん 60%以上の得点
配点は「マネジメント、評価」と「コミュニケーション、リーダーシップ」が各30点、「技術者倫理」と「継続研さん」が各20点です。つまり合格ラインは総合点ではありません。計算すると、30点の項目は18点、20点の項目は12点が必要です。3項目で満点を取っても、1項目が59%なら不合格になります。
この構造から、不合格の理由の探し方が決まります。全体的に答えが弱かったのではなく、4項目のうちどれか1つ(または複数)が60%に届かなかったのが不合格の形です。配点20点の技術者倫理と継続研さんは軽く見えますが、落とせば即不合格という意味では30点の項目と同じ重みを持ちます。配点と基準の全体像は技術士第二次試験 口頭試験の試問事項と配点(令和8年度)— 4項目すべて60%の意味にまとめています。
なお、令和8年度は試問事項の表記が変わり、区分Ⅱの名称が「技術士としての適格性」から「技術士としての取組姿勢」に、区分Ⅰの①と②の順序が入れ替わっています。配点と「各項目60%以上」の基準は変わっていません。この記事も番号ではなく項目名で書いています。
口頭試験の通過率は令和7年度で93.1% — 筆記合格者2,957人のうち最終合格2,752人
口頭試験だけの合格率は、受験申込み案内の統計表には載っていません。ただし、文部科学省が公表している筆記試験合格者数と、受験申込み案内に載っている最終合格者数は、どちらも公表値です。この2つを割ると、口頭試験の通過率が算出できます。
- 筆記試験合格者数: 2,957名(文部科学省 技術士分科会試験部会 資料4「令和7年度技術士第二次試験筆記試験の結果について」)
- 最終合格者数: 2,752人(令和8年度 受験申込み案内「令和7年度 技術士第二次試験結果(技術部門別)」)
- 口頭試験の通過率(算出値)= 2,752 ÷ 2,957 = 93.1%
差の205人が、筆記に合格したのに最終合格に含まれなかった人数です。筆記合格者の6.9%にあたります。
この算出値には注意点が2つあります。第一に、分母の筆記合格者には口頭試験を欠席した人も含まれます。口頭試験の受験者数そのものは公表されていないため、厳密には「口頭試験の合格率」ではなく「筆記合格者のうち最終合格した割合」です。第二に、値は公表値どうしの割り算であり、公式資料に「93.1%」という数字が書かれているわけではありません。
部門別の通過率(令和7年度)
部門別の筆記合格者数は上記の文部科学省資料に、部門別の最終合格者数は受験申込み案内の表に載っています。同じ割り算を21部門すべてで行った結果です。
| 技術部門 | 筆記合格者数 | 最終合格者数 | 通過率(算出値) |
|---|---|---|---|
| 機械 | 187 | 143 | 76.5% |
| 船舶・海洋 | 3 | 3 | 100.0% |
| 航空・宇宙 | 11 | 8 | 72.7% |
| 電気電子 | 117 | 104 | 88.9% |
| 化学 | 26 | 21 | 80.8% |
| 繊維 | 3 | 3 | 100.0% |
| 金属 | 13 | 13 | 100.0% |
| 資源工学 | 4 | 4 | 100.0% |
| 建設 | 1,378 | 1,304 | 94.6% |
| 上下水道 | 191 | 174 | 91.1% |
| 衛生工学 | 50 | 49 | 98.0% |
| 農業 | 117 | 117 | 100.0% |
| 森林 | 34 | 34 | 100.0% |
| 水産 | 14 | 14 | 100.0% |
| 経営工学 | 34 | 30 | 88.2% |
| 情報工学 | 19 | 18 | 94.7% |
| 応用理学 | 72 | 64 | 88.9% |
| 生物工学 | 9 | 8 | 88.9% |
| 環境 | 50 | 48 | 96.0% |
| 原子力・放射線 | 10 | 9 | 90.0% |
| 総合技術監理 | 615 | 584 | 95.0% |
| 合計 | 2,957 | 2,752 | 93.1% |
| (総合技術監理部門を除く) | 2,342 | 2,168 | 92.6% |
建設部門は筆記合格者1,378人のうち最終合格が1,304人で、通過率は94.6%。74人が最終合格に含まれていません。全21部門で最も低いのは航空・宇宙部門の72.7%(筆記合格11人・最終合格8人)ですが、筆記合格者が100人を超える部門に限れば機械部門の76.5%が最も低く、筆記合格者187人のうち44人が最終合格に含まれていません。逆に船舶・海洋・繊維・金属・資源工学・農業・森林・水産の7部門は、筆記合格者全員が最終合格しています。
受験者数が少ない部門の値は振れやすい点に注意してください。船舶・海洋(筆記合格3人)や資源工学(4人)は、1人違うだけで通過率が25〜33ポイント動きます。
検算として、日本技術士会が合格発表ページに添付している合格者名簿PDF(受験番号一覧)の受験番号を部門コードごとに数えると、筆記合格者名簿は2,957件(建設1,378件)、最終合格者名簿は2,752件(建設1,304件)で、上の公表値と全部門で一致しました。
令和5〜7年度の推移
文部科学省の資料には前年度の筆記合格者数も載っているため、直近3年度分を同じ式で算出できます。最終合格者数は受験申込み案内の「平成27年度~令和7年度 技術士第二次試験結果」の値です。
| 年度 | 筆記合格者数 | 最終合格者数 | 通過率(算出値) | 総合技術監理部門を除く |
|---|---|---|---|---|
| 令和5年度 | 2,867 | 2,690 | 93.8% | 2,147 ÷ 2,297 = 93.5% |
| 令和6年度 | 2,565 | 2,395 | 93.4% | 2,013 ÷ 2,160 = 93.2% |
| 令和7年度 | 2,957 | 2,752 | 93.1% | 2,168 ÷ 2,342 = 92.6% |
3年度とも93〜94%の範囲で、筆記合格者の6〜7%が最終合格に含まれていません。「口頭試験は通過儀礼」でも「半分落ちる」でもなく、筆記合格者の15人に1人前後が口頭で不合格(または欠席)になるのが公表値から言える実態です。全体の合格率(対受験者)の推移は技術士二次試験の合格率データ(令和7年度)— 全体11.4%・建設部門9.3%の実数を参照してください。
「不合格体験記」は公開されているか — 質問を逐語で再現した不合格記録は0本
「技術士 口頭試験 不合格体験記」で検索する人は多いのですが、読んで対策に使える不合格の記録は、当サイトが確認した範囲ではほぼ存在しません。
当サイトは、SUKIYAKI塾(pejp.net)に公開されている令和元年度〜令和6年度の口頭試験再現記録のうち、本文を読み取れた11本を数えています。このうち合否が本文に明記されているのは3本で、すべて合格です。残り8本は本文からは合否が分かりません。不合格と明記したうえで質問と回答を逐語で再現した記録は、11本中0本でした。
これは11本に限った話ではありません。検索結果に出てくる「不合格体験記」の多くは、講座サイトが書く落ちる人の特徴の解説か、掲示板の伝聞です。本人が「不合格だった」と明かして、何を聞かれてどう答えたかまで書いた記録は、一次資料としてはほぼ見つかりません。理由は推測になりますが、不合格者は記録を公開する動機が弱いこと、そして前述のとおり試験機関が採点結果の内容を教えないため、本人にも「どこで落ちたか」が分からないことが挙げられます。
したがって「不合格の実例から学ぶ」という方法は、材料がないので取れません。落ちる人が何で落ちるのかを、合否決定基準の構造と通過率から数えたものは技術士 口頭試験は厳しいのか・落ちる人は何が違うのか — 各項目60%の構造と通過率93.1%で数えるにまとめています。代わりにできるのは、合格記録に残っている質問の型を自分の答えに当てて、4項目のどこが60%に届かないかを自分で見つけることです。実際に聞かれた質問の型は、技術士 口頭試験で実際に聞かれた質問 — 再現記録11本・180問を令和8年度の試問事項別に数えたで項目別に実数で示しています。
「早く終わった」「手応えがない」は不合格のサインではない — 時間は基準にない
試問時間の長短は、合否の基準に含まれていません。実施大綱は試問時間について次のように定めています。
③ 試問事項及び試問時間は、次のとおりとする。なお、試問時間を10分程度延長することを可能とするなど受験者の能力を十分確認できるよう留意する。
延長は「受験者の能力を十分確認できるよう」にするための仕組みであって、延長されたから不合格、早く終わったから不合格という規定はどこにもありません。合否を決めるのは、前述の各項目60%以上という基準だけです。
再現記録11本の実時間も見ておきます。試験官は2名が6本、3名が4本、明記なしが1本。所要時間は本人の記載で17分から25分ぐらいまでで、「20分きっちり」「約20分」が最も多く、大綱の「20分(10分程度延長の場合もあり)」の範囲に収まっています。25分ぐらいかかった令和3年度(総合技術監理部門)の記録の本人は「時間は25分ぐらいだった。」と書いたうえで、合格だったと明記しています。延長された記録が合格している実例です。
「口頭試験が早く終わった」「試験官の反応が良かった」といった手応えについて、公式資料に合否との対応を示す記述はありません。合否は各項目60%以上という基準だけで決まります。いわゆる「合格フラグ」にも公式の基準はありません。再現記録の実時間の分布と、17分・25分ぐらいで合格した記録の中身は技術士 口頭試験が早く終わった・手応えがない — 試問時間「20分」の規定と、再現記録の実時間17〜25分で詳しく扱っています。発表までの期間に手応えを何度も思い返しても合否は変わらないので、その時間は次の節の作業に使うほうが合理的です。
再受験で変えるべきものは受験申込書 — 口頭試験の台本は720字
翌年もう一度受けるなら、最初に手を入れるべきは受験申込書です。口頭試験は実施大綱で「筆記試験における記述式問題の答案及び業務経歴を踏まえ実施する」と定められており、試験官の手元にある材料は、あなたが4月に提出した業務経歴5行と業務内容の詳細720字です。質問はここから作られます。
不合格の年の申込書を出し直すかどうかは、次の手順で判断してください。
- 不合格の年に提出した業務内容の詳細720字を、「マネジメント、評価」「コミュニケーション、リーダーシップ」「技術者倫理」「継続研さん」の4項目に当てはめ、それぞれの項目について720字の中に材料があるかを確認する。材料がない項目は、口頭で何を聞かれても答えが薄くなります
- 口頭で答えに詰まった質問を思い出せる範囲で書き出し、どの項目の質問だったかを分類する。60%に届かなかった項目は、たいていここに集中しています
- 材料が薄い項目に対応する経験が別の業務にあるなら、720字に取り上げる業務そのものを変える。同じ業務で書き直すなら、薄い項目の材料を入れる
申込書を口頭試験から逆算して書く方法は受験申込書は口頭試験の台本になる— 試問事項4項目から逆算して業務経歴票を書くで扱っています。申込書は提出後に訂正できないため、4月の提出前に4項目の材料が揃っているかを確認するのが、翌年の口頭試験対策の最初の一手です。
まとめ — 次に取る行動
口頭試験で不合格になっても、翌年の筆記試験は免除されません。合否は4項目それぞれ60%以上という基準だけで決まり、筆記合格者の6〜7%が毎年ここで最終合格に含まれていません。不合格の理由は教えられず、参考になる不合格記録も公開されていないので、自分で4項目に分解して見つけるしかありません。
- 発表前で手応えがない人: 合否は3月12日(予定)の発表まで分かりません。手応えの反すうに時間を使わず、提出した720字と口頭で答えた内容を4項目に分けて書き出しておく。不合格だった場合、そのメモが翌年の申込書を直す材料になります
- 不合格だった人: 翌年の受験申込は4月1日から。720字を4項目に当てて材料の薄い項目を特定し、業務を変えるか書き直すかを決める
- 筆記の準備を再開する: 筆記試験は7月。口頭で落ちた年の筆記の答案は「合格」だったので、答案の書き方は変えずに、選択科目の知識の更新に時間を使う
筆記合格発表から口頭試験までの日程の流れは筆記合格発表(11月4日予定)から口頭試験まで — 令和8年度の準備スケジュールにまとめています。