口頭試験で実際に出る質問は、講座の想定問答集にある「定番」よりも、あなたが受験申込書の720字に書いた業務の中身に寄っています。公開されている受験者本人の再現記録11本に記録された質問180問を数えると、総合技術監理部門を除く7本(126問)では、試問事項4項目に直接対応する質問が95問、残り31問は業務の技術的な深掘りと受験動機でした。

この記事は、筆記試験の合格発表(11月4日予定)を待ちながら口頭試験の準備を始めたい人に向けて書いています。根拠は、試験のルールについては受験申込み案内・実施大綱・日本技術士会の公式FAQの原文、実際に何が聞かれたかについては受験者本人が公開している再現記録です。講座の経験則ではなく、数えられる数字だけを置きます。

先に断っておくと、11本は令和元年度〜令和6年度の記録で、質問はすべて令和7年度までの試問事項の枠組みで行われたものです。令和8年度は試問事項の番号と名称が変わっているため、この記事では番号ではなく項目名で対応づけています。

公式に決まっているのは「4項目」だけで、質問の材料は業務経歴

口頭試験で何を問うかは、受験申込み案内に試問事項として4項目が書かれているだけで、質問文そのものは公開されていません。令和8年度の案内には次のように書かれています。

なお、業務経歴等の内容を確認することがありますが、試問の意図を考え簡潔明瞭にご回答ください。

試問事項[ 配点 ] 試問時間

Ⅰ 技術士としての実務能力 ① マネジメント、評価[ 30 点 ] ② コミュニケーション、リーダーシップ[ 30 点 ] 20 分(10 分程度延長の場合もあり)

Ⅱ 技術士としての取組姿勢 ③ 技術者倫理[ 20 点 ] ④ 継続研さん[ 20 点 ]

出典: 令和8年度 技術士第二次試験 受験申込み案内(日本技術士会)

質問の材料が何かは、実施大綱のほうに書かれています。

② 口頭試験は、技術士としての適格性を判定することに主眼をおき、筆記試験における記述式問題の答案及び業務経歴を踏まえ実施するものとし、筆記試験の繰り返しにならないよう留意する。

出典: 令和8年度 技術士第二次試験実施大綱(科学技術・学術審議会 技術士分科会試験部会)

つまり「4項目を、あなたの業務経歴を材料にして問う」のが公式の設計です。この後で見る再現記録の数字は、この設計がそのまま実行されていることを示しています。配点と「各項目60%以上」の合否決定基準については技術士第二次試験 口頭試験の試問事項と配点(令和8年度)にまとめています。

令和8年度から番号と名称が変わった — 手元の問答集は「旧番号」で書かれている

令和8年度の受験申込み案内と実施大綱では、試問事項の表記が令和7年度までと変わっています。区分Ⅱの名称が「技術士としての適格性」から「技術士としての取組姿勢」に、区分Ⅰの①と②の順序が入れ替わりました。

令和7年度まで

Ⅰ 技術士としての実務能力
① コミュニケーション、リーダーシップ
② 評価、マネジメント
Ⅱ 技術士としての適格性
③ 技術者倫理 ④ 継続研さん

令和8年度から

Ⅰ 技術士としての実務能力
① マネジメント、評価
② コミュニケーション、リーダーシップ
Ⅱ 技術士としての取組姿勢
③ 技術者倫理 ④ 継続研さん

日本技術士会は公式FAQで、順序を入れ替えた理由を次のように説明しています。

「技術士としての実務能力」に関しては、受験者があらかじめ提出している業務経歴を踏まえ実施されており、受験者への質問の流れとしてのスムーズさ、それに伴う受験者の答えやすさを勘案し、「コミュニケーション、リーダーシップ」と「評価、マネジメント」の順番を入れ替えることとなりました。 なお、試験内容については変更ありません。

出典: 日本技術士会「口頭試験に関する質問(第二次試験)」Q6

「試験内容については変更ありません」とあるとおり、聞かれる中身は変わりません。ただし、令和7年度までに作られた想定問答集・体験記・講座教材は、①がコミュニケーション、リーダーシップで書かれています。番号で覚えると令和8年度の案内と食い違うので、この記事も含めて項目名で読んでください。 改訂の全体像は令和8年度から適用のコンピテンシー改訂で扱っています。

再現記録11本・180問をどう数えたか

数えた対象は、SUKIYAKI塾(pejp.net)に公開されている令和元年度〜令和6年度の口頭試験再現記録のうち、本文を読み取れた11本です。内訳は総合技術監理部門を除く技術部門(以下「一般部門」)が7本、総合技術監理部門が4本。書き手は9人で、2人は一般部門と総合技術監理部門の両方の記録を残しています。

数え方のルールは次のとおりです。

試問事項一般部門7本総合技術監理部門4本合計11本
マネジメント、評価26問19問45問
コミュニケーション、リーダーシップ28問15問43問
技術者倫理19問0問19問
継続研さん22問1問23問
その他31問19問50問
合計126問54問180問

総合技術監理部門の4本は技術者倫理が0問、継続研さんが1問です。試問事項が異なる部門なので、以下の項目別の見方は一般部門7本(126問)を基準にします。

なお、11本のうち合否が本文に明記されているのは3本(すべて合格)で、残り8本は本文からは分かりません。「合格者の再現記録」とは呼べない母集団であることは、数字を読むときの前提にしてください。

項目別に、実際にどう聞かれたか

各項目について、11本のうち何本の記録でその型の質問が出たかと、記録に残っている言い回しを示します。

マネジメント、評価 — 「資源をどう配分したか」と「失敗を次にどう活かしたか」

資源配分を問う質問は11本中7本、失敗・改善点・成果の自己評価を問う質問は11本中7本の記録に出ています。言い回しはコンピテンシーの定義文にかなり忠実です。

定義の「資源を配分する」「次段階や別の業務の改善に資する」がそのまま質問になっていることが分かります。答えの組み立ては口頭試験「マネジメント、評価」で聞かれる質問と答え方の型で扱っています。

コミュニケーション、リーダーシップ — 最も多くの記録に出た項目

リーダーシップを発揮した事例・利害関係者の調整を問う質問は11本中8本と、すべての型の中で最も多くの記録に出ています。関係者とのコミュニケーションの方法や工夫を問う質問が5本、部下・若手・後輩の指導を問う質問が5本です。

「利害関係者は誰か」→「どう調整したか」→「あなたが先導した点は」と段階的に掘る流れが複数の記録に共通しています。準備の手順は「コミュニケーション、リーダーシップ」の想定質問と準備の手順を参照してください。

技術者倫理 — 「一番重要だと思うこと」と、不正を仮定した質問

「技術者倫理で最も重要だと思うこと・注意していること」を問う質問は一般部門7本中6本に出ています。加えて、データ改ざんなどの不正を仮定した質問が2本にあります。

配点20点でも60%を下回れば不合格になる項目です。答える材料は技術者倫理の口頭試験質問— 三義務二責務・公益確保・コンプライアンスにまとめています。

継続研さん — 「これまで」と「技術士になったら」の2方向

これまでの研さんを問う質問が5本、技術士取得後の研さんや抱負を問う質問が6本です。同じ記録の中で「これまで」と「今後」を続けて聞かれる形が多く、論文発表や学会加入の有無まで踏み込まれた記録も2本あります。

令和8年度から適用される改訂版コンピテンシーでは、この項目の定義が「CPD活動を行い」と書き換わっています。何を答えれば定義に届くかは継続研さん(CPD)の口頭試験質問に何を答えるかで整理しています。

4項目に入らない質問が、一般部門で31問ある

「その他」に分類した質問は一般部門7本で31問です。中身は大きく3種類でした。

業務内容の技術的な深掘りは11本中7本に出ています。工法の効果、データの出所、地質の判定など、720字に書いた内容の固有名を挙げて「それはどうやって確かめたのか」「本当に自分で考えたのか」と聞かれる形です。1本の記録では、この型だけで11問ありました。逆に「技術的な質問は一切なし」と本人が書いている記録も1本あります。

受験動機は5本に出ています。一方で「聞かれなかった」と明記している記録が2本あり、必ず聞かれる質問ではありません。「なぜこの業務を業務内容の詳細に選んだのか」は2本です。

筆記試験の答案についての質問は11本中1本でした。「聞かれなかった」と明記しているのが5本です。再現論文をどこまで用意するかは口頭試験で筆記答案は聞かれる?再現記録11本の実数と準備量で扱っています。

質問とは別に、冒頭で経歴と業務内容の詳細の説明を求められた記録が11本中8本あります。指定時間は「1分で」「1〜2分程度で」「2分半程度で」「3分程で」「数分程度で」「5分以内で」と記録ごとに異なり、指定なしが1本、不明が1本です。説明を求められなかった記録は3本あります。どの指定にも対応できる組み立て方は冒頭「経歴と業務内容の詳細を3分で」— 構成テンプレと時間配分にまとめました。

試験の形についても数えておきます。試験官は2名が6本、3名が4本、明記なしが1本。所要時間は本人の記載で17分から25分ぐらいまでで、「20分きっちり」「約20分」が最も多く、大綱の「20分(10分程度延長の場合もあり)」の範囲に収まっています。

想定問答集を令和8年度の枠組みで使うには

再現記録から分かることを、市販や講座の想定問答集の使い方に落とすと次の3点になります。

  1. 番号ではなく項目名で読み替える。 令和7年度までの教材は①がコミュニケーション、リーダーシップです。令和8年度の案内では①がマネジメント、評価。中身は同じなので、項目名で対応づければそのまま使えます
  2. 定番質問は「型」として持ち、答えは720字から作る。 資源配分・失敗と改善・利害関係者の調整・倫理で最も重要なこと・これまでと今後の研さん、の5つの型は11本の半分以上に出ています。ただし答えの材料は業務経歴なので、問答集の模範解答をそのまま覚えても使えません
  3. 技術的な深掘りを想定問答集に期待しない。 一般部門で31問あった「その他」の中心は、あなたの業務の固有名を挙げた確認です。ここは720字に書いた一文一文について「なぜそうしたか」「どう確かめたか」を自分で言えるようにするしかありません

なお「口頭試験が早く終わった」「試験官の反応が良かった」といった手応えについて、公式資料に合否との対応を示す記述はありません。合否は各項目60%以上という基準だけで決まります。

まとめ — 次に取る行動

公式に決まっているのは4項目と「業務経歴を踏まえて実施する」という設計だけで、再現記録11本の数字はその設計どおりに試験が行われていることを示しています。準備の順序は次のとおりです。

  1. 受験申込書の控えを出し、業務内容の詳細720字と業務経歴5行を読み直す。質問の材料はここにしかありません
  2. 5つの型(資源配分/失敗と改善/利害関係者の調整/倫理で最も重要なこと/これまでと今後の研さん)について、720字の業務を材料にした答えを各1分で用意する
  3. 720字に書いた技術的な判断について「なぜ」「どう確かめたか」を1行ずつ書き出す。ここが4項目に入らない31問の対策になります
  4. 冒頭説明は1分・3分・5分の3パターンを用意する

申込書の段階から口頭試験を逆算する考え方は受験申込書は口頭試験の台本になるで扱っています。