試問事項②「コミュニケーション、リーダーシップ」は配点30点、合否決定基準は60%以上の得点です。①の「マネジメント、評価」と並ぶ最大配点の項目で、しかもこの2語は令和8年度からの改訂で片方の文言が変わっています。まず公式定義を確認します。

公式の定義(令和8年度適用の改訂版)

コミュニケーション

業務履行上,情報技術を活用し,口頭や文書等の方法を通じて,雇用者,上司や同僚,クライアントやユーザー等多様な関係者との間で,明確かつ包摂的な意思疎通を図り,協働すること。/海外における業務に携わる際は,一定の語学力による業務上必要な意思疎通に加え,現地の社会的文化的多様性を理解し関係者との間で可能な限り協調すること。

リーダーシップ

業務遂行にあたり,明確なデザインと現場感覚を持ち,多様な関係者の利害等を調整し取りまとめることに努めること。/海外における業務に携わる際は,多様な価値観や能力を有する現地関係者とともに,プロジェクト等の事業や業務の遂行に努めること。

改訂で変わったのはコミュニケーションの側

受験申込み案内に掲載された新旧対照表を読むと、この2語のうち改訂されたのはコミュニケーションだけです。改訂前は次の文言でした。

業務履行上,口頭や文書等の方法を通じて,雇用者,上司や同僚,クライアントやユーザー等多様な関係者との間で,明確かつ効果的な意思疎通を行うこと。

変わった箇所は2つです。

「効果的」から「包摂的」への変化は、伝達の巧拙から、立場の異なる関係者を排除せず巻き込めているかへ評価の重心が移ったことを意味します。一方通行で正確に伝えた話より、意見の異なる相手の言い分を取り込んで一緒に進めた話のほうが、改訂後の定義には合致します。

リーダーシップの定義は改訂前後で変わっていません。他の項目を含む改訂の全体像は令和8年度から適用のコンピテンシー改訂— 何が変わったか(4項目)にまとめています。

実際に問われる質問の型

この項目の質問も、受験申込書の業務経歴と業務内容の詳細を材料に組み立てられます。典型的な形は次のとおりです。

後半2つは、コミュニケーションと「評価」の両方にまたがる質問です。この系統への備えは「失敗例」「部下のミス」— 評価・指導を問う質問への備えで扱います。

準備の手順1: ステークホルダーを書き出す

「ステークホルダーは誰でしたか」は、その場で考えると必ず漏れが出ます。事前に、受験申込書に書いた業務について関係者を紙に書き出しておきます。定義に列挙されている「雇用者,上司や同僚,クライアントやユーザー等」を手がかりに、次の観点で洗います。

ここで大事なのは、利害が一致していない相手を必ず1つ以上含めることです。全員が同じ方向を向いていた話では、次の「利害調整」の質問に接続できません。

準備の手順2: 対立と調整を1件、事実で用意する

リーダーシップの定義は「多様な関係者の利害等を調整し取りまとめることに努めること」です。したがって答えるべきは、役職や指揮命令ではなく、利害が食い違った具体的な場面での調整の中身です。

骨格は次のようになります。

  1. 誰と誰の、どんな要求が食い違ったか
  2. それぞれの言い分をどう把握したか(ヒアリング、資料提示、会議設計など)
  3. どんな案を示して合意点を作ったか(定義でいう「明確なデザイン」)
  4. 結果として何が決まり、業務がどう進んだか

なお定義には「現場感覚を持ち」という語も含まれています。机上の調整だけでなく、現場の実情を踏まえた案だったことに触れられると定義への対応が明確になります。

準備の手順3: 「情報技術を活用し」に一言で触れられるようにする

改訂で加わった「情報技術を活用し」は、無理に大がかりなDXの話にする必要はありません。図面や3次元モデルの共有、遠隔での協議、データを可視化して合意形成に使ったといった、実際に行ったことを事実の範囲で述べれば足ります。やっていないことを作らないことが前提です。

答え方の共通ルール

受験申込み案内には「試問の意図を考え簡潔明瞭にご回答ください」と明記されています。試問時間は20分(10分程度延長の場合もあり)で4項目を問われるため、1問あたりに使える時間は長くありません。

コミュニケーションの項目は、皮肉なことに答え方そのものが評価の材料になり得る位置にあります。結論から述べ、質問された範囲に答え、必要なら補足する。この順序を崩さないことが、内容の準備と同じくらい重要です。

配点と合否決定基準の全体像は技術士第二次試験 口頭試験の試問事項と配点(令和8年度)を、資源配分の観点から問われる①への備えは口頭試験「マネジメント、評価」で聞かれる質問と答え方の型を参照してください。