令和8年度の技術士第二次試験 建設部門 必須科目Ⅰは、Ⅰ-1が新技術・DXの活用によるインフラの価値向上、Ⅰ-2がグリーンインフラを活かした取組を主題としており、どちらも、(1)3つの技術課題を観点つきで抽出し、(2)最も重要な1つに複数の解決策を示し、(3)懸念事項と対応策を述べ、(4)倫理と社会の持続性から要件を書く、という4段構成です。

この記事は、令和9年度以降の受験に向けて過去問を読み込む人と、令和8年7月20日の筆記試験を受けて自分の答案を振り返っている人に向けたものです。模範解答や解答例は載せません。載せるのは、設問が「何を書け」と指示しているかの分解と、令和元年度から令和8年度までの16題を並べて数えた出題テーマ・設問形式の推移です。

根拠は日本技術士会が公表している各年度の試験問題の原文だけです。テーマ名は設問文中の語をそのまま使い、予備校の解説やまとめ記事は根拠にしていません。

令和8年度の必須科目Ⅰは、2問とも「3つの技術課題」から書かせる

まず出題の指示を確認します。必須科目Ⅰは2問題のうち1問題を選び、答案用紙3枚を用いてまとめる形式です。

Ⅰ 次の2問題(Ⅰ-1,Ⅰ-2)のうち1問題を選び解答せよ。(解答問題番号を明記し,答案用紙3枚を用いてまとめよ。)

出典: 令和8年度技術士第二次試験問題〔建設部門〕必須科目Ⅰ(日本技術士会)

答案用紙はA4片面刷で、受験申込み案内に「24字×25行=600字」と記載されています。3枚で1,800字です。必須科目Ⅰの配点は40点、解答時間は2時間(10:00〜12:00)です。配点と時間の詳細は技術士二次試験の科目構成と配点(Ⅰ40点・Ⅱ30点・Ⅲ30点)と合否決定基準にまとめています。

Ⅰ-1(新技術・DXとインフラの価値向上)が指示していること

 Ⅰ-1 ICT技術の進歩と普及に伴って,AI,ドローン・ロボット,ビッグデータ,IoT,リモートセンシング等のイノベーションの開発・社会実装が急速に進み,社会・経済のあらゆる場面で,デジタル技術を活用した人々の生活や経済活動の変革が進んでいる。(中略) (1)新技術・DXの活用によるインフラの価値向上を進めるに当たり,技術者としての立場で多面的な観点から3つの技術課題を抽出し,それぞれの観点を明記したうえで,その技術課題の内容を示せ。(*)   なお,観点はインフラの価値に関するものとする。   (*)解答の際には必ず観点を述べてから技術課題を示せ。 (2)前問(1)で抽出した技術課題のうち,最も重要と考える技術課題を1つ挙げ,その技術課題に対する複数の解決策を示せ。 (3)前問(2)で示したすべての解決策を実行しても新たに生じうる懸念事項とそれへの対応策について,専門技術を踏まえた考えを示せ。 (4)前問(1)~(3)を業務として遂行するに当たり,技術者としての倫理,社会の持続性の観点から必要となる要件・留意点を述べよ。

出典: 令和8年度技術士第二次試験問題〔建設部門〕必須科目Ⅰ(日本技術士会)

小問ごとに、何をいくつ書けと言われているかを取り出すと、次のようになります。

小問書けと指示されているもの数の指定見落としやすい条件
(1)観点と、その観点から抽出した技術課題技術課題は3つ「観点はインフラの価値に関するものとする」/脚注で「解答の際には必ず観点を述べてから技術課題を示せ」と順序まで指定
(2)最も重要と考える技術課題1つと、それに対する解決策技術課題は1つ、解決策は複数(1)で挙げた3つの中から選ぶ(新しい課題を持ち出さない)
(3)すべての解決策を実行しても新たに生じうる懸念事項と、その対応策指定なし「専門技術を踏まえた考え」を求めている
(4)技術者としての倫理、社会の持続性の観点から必要となる要件・留意点観点は2つ(1)〜(3)の業務遂行に当たっての要件であり、一般論ではない

背景として設問が名指ししているのは「第6次社会資本整備重点計画」(令和8年1月に定められたもの)です。

Ⅰ-2(グリーンインフラと共生社会)が指示していること

 Ⅰ-2 気候変動に伴う自然災害の激甚化・頻発化や生物多様性の損失など,環境問題が深刻化している。(中略) (1)令和8年1月に策定された「グリーンインフラ推進戦略2030」を踏まえ,グリーンインフラを活かした具体の取組を進めるに当たり,技術者としての立場で多面的な観点から3つの技術課題を抽出し,それぞれの観点を明記したうえで,その技術課題の内容を示せ。(*)   なお,観点は人と自然が共生する社会づくりに関するものとする。   (*)解答の際には必ず観点を述べてから技術課題を示せ。 (2)前問(1)で抽出した技術課題のうち,最も重要と考える技術課題を1つ挙げ,その技術課題に対する複数の解決策を示せ。 (3)前問(2)で示した解決策に関連して新たに浮かび上がってくる将来的な懸念事項とそれへの対策について,専門技術を踏まえた考えを示せ。 (4)前問(1)~(3)を業務として遂行するに当たり,技術者としての倫理,社会の持続性の観点から必要となる要件・留意点を述べよ。

出典: 令和8年度技術士第二次試験問題〔建設部門〕必須科目Ⅰ(日本技術士会)

Ⅰ-1と並べると、(1)(2)(4)はほぼ同じ文ですが、(3)だけが違います。Ⅰ-1は解決策を実行した結果として生じるものを、Ⅰ-2は解決策に関連して将来浮かび上がってくるものを問います。

もう1つの違いは(1)の観点の範囲です。Ⅰ-1は「観点はインフラの価値に関するものとする」、Ⅰ-2は「観点は人と自然が共生する社会づくりに関するものとする」と、それぞれ別の主題に限定されています。観点を何から立ててもよいわけではありません。

Ⅰ-1 の (3)

解決策をすべて実行してもなお生じうる懸念を問う(結果として残るもの)

Ⅰ-2 の (3)

解決策に関連して将来浮かび上がる懸念を問う(時間軸を先に置く)

答案用紙3枚・1,800字に、4つの小問をどう割り振るか

公表問題にも受験申込み案内にも小問ごとの字数指定はありません。判断材料になるのは、令和8年度のⅠ-1・Ⅰ-2が要求している要素の数だけです。

小問要求されている要素の数
(1)観点3つ+技術課題3つ(観点を先に述べる)
(2)技術課題1つ+解決策は複数(下限は2つ)
(3)懸念事項と対応策(数の指定なし・専門技術を踏まえる)
(4)倫理の観点と持続性の観点の2つ

1,800字を4つの小問で単純に等分すると1問あたり450字です。ところが(1)だけは観点と技術課題の組を3つ書く必要があり、単純計算で1組150字しか使えません。要素数がもっとも多いのは(1)で、字数が最も足りなくなるのも(1)です。 過去問で答案構成を練習するときは、まず(1)に何字使うかを決め、残りを(2)〜(4)に配る順序になります。配分そのものは受験者に委ねられており、正解の比率は公表されていません。

令和元〜8年度の必須科目Ⅰは何を出してきたか(16題の一覧)

8年度分16題を並べると、Ⅰ-1とⅠ-2で扱う領域が毎年ずれています。テーマ名は設問文中の語をそのまま使いました。

年度Ⅰ-1 の主題Ⅰ-2 の主題
令和元年度建設分野における生産性の向上国土強靱化(ナショナル・レジリエンス)
令和2年度地域の中小建設業の担い手確保老朽化する社会インフラの戦略的なメンテナンス
令和3年度廃棄物に関する問題と循環型社会の構築風水害による被害の防止又は軽減
令和4年度社会資本の整備・維持管理及び利活用に向けたDXの推進CO2排出量削減及びCO2吸収量増加
令和5年度巨大地震を想定した社会資本の整備事業及び都市の防災対策施設のメンテナンスの「第2フェーズ」
令和6年度全国的なネットワークの形成と地域・拠点間の連結大規模災害の復旧・復興へのDXの活用
令和7年度持続可能な建設業の実現(担い手・地域の守り手)経済成長の実現に必要な社会資本整備
令和8年度新技術・DXの活用によるインフラの価値向上グリーンインフラを活かした具体の取組

この16題から読み取れる事実は2つです。1つは、DXまたは新技術を主題にした問題が令和4年度Ⅰ-1・令和6年度Ⅰ-2・令和8年度Ⅰ-1と3回出ていること。もう1つは、防災・災害を主題にした問題が令和元年度Ⅰ-2・令和3年度Ⅰ-2・令和5年度Ⅰ-1・令和6年度Ⅰ-2の4回出ており、8年度のうち防災・災害またはメンテナンスのどちらかは必ず2問中1問に含まれていることです。

次年度に何が出るかは公表されておらず、この表から出題を予想することはできません。使えるのは、同じ主題が数年おきに戻ってきているという事実までです。建設部門の選択科目11科目の区分は建設部門の選択科目11科目と科目別の特徴で扱っています。

設問の型は8年でどう変わったか — 課題数と(3)の問い方

設問の主題より変化が大きいのは、答案の形をどこまで指定するかです。8年分の(1)と(3)を並べます。

年度(1)の指示(3)が問うもの(Ⅰ-1 / Ⅰ-2)
令和元年度数の指定なし・「課題を抽出し分析せよ」リスクとそれへの対策 / 同一の文
令和2年度数の指定なし・「その内容を観点とともに示せ」波及効果と新たな懸案事項への対応策 / リスクとそれへの対策
令和3年度「3つ課題」・観点の明記を要求波及効果と懸念事項への対応策 / リスクとそれへの対応策
令和4年度3つの課題・観点の明記を要求波及効果と懸念事項への対応策 / リスクとそれへの対応策
令和5年度「3つ課題」・観点の明記を要求リスクとそれへの対策 / 同一の文
令和6年度「3つ課題」+脚注を新設+人員や予算の制約を前提に波及効果と懸念事項への対応策 / リスクとそれへの対策
令和7年度「3つの技術課題」+脚注将来的な懸念事項とそれへの対策 / 波及効果と懸念事項への対応策
令和8年度「3つの技術課題」+脚注+観点の主題を限定懸念事項とそれへの対応策 / 将来的な懸念事項とそれへの対策

数えると、(3)の文が2問でまったく同じだったのは令和元年度と令和5年度の2年だけです。残り6年は、同じ年度の2問で(3)の問い方が違います。必須科目Ⅰの(3)はリスクを書くもの、と一律に覚えて臨むと、選んだ問題によって要求とずれます。

もう1つ数えられる変化があります。(3)に「リスク」の語が使われなくなったのは令和7年度からで、令和7年度・令和8年度は4問すべてで「懸念事項」に置き換わっています。令和6年度まではⅠ-2に「リスク」が残っていました。

(1)の側では3段階の変化がありました。令和2年度までは課題の数の指定がなく、令和3年度から「3つ」に固定されました。令和6年度に脚注「解答の際には必ず観点を述べてから課題を示せ」が加わり、書く順序まで指定されました。そして令和7年度から語が「課題」から「技術課題」に変わり、令和8年度は「観点はインフラの価値に関するものとする」のように観点の主題そのものが限定されました。

過去問から答案を組み立てる手順

過去問を使うときにまずやることは、答案を書くことではなく設問の指示を漏れなく取り出すことです。令和8年度の2問を材料にすると、手順は次のようになります。

  1. 2問の(3)を先に読み比べる。 令和8年度のように、Ⅰ-1とⅠ-2で(3)の条件が違う年があります。問題を選ぶ判断材料は主題だけではありません。
  2. (1)の観点の範囲を確認する。 令和8年度は観点の主題が指定されています。この一文を読み飛ばすと、観点が設問の外に出ます。
  3. 観点→技術課題の順に3組を並べる。 脚注が「解答の際には必ず観点を述べてから技術課題を示せ」と順序を指定しています。順序が逆だと指示に反します。
  4. (2)で選ぶ技術課題は(1)の3つの中から選ぶ。 設問は「前問(1)で抽出した技術課題のうち」と限定しています。
  5. (3)は設問の条件語に合わせる。 「実行しても新たに生じうる」のか「関連して新たに浮かび上がってくる将来的な」のかで、書くべき対象が変わります。
  6. (4)は観点を2つとも書く。 設問は倫理と社会の持続性の2つを挙げています。片方だけでは要求の半分です。

この6項目は、どの年度の必須科目Ⅰでも設問文から機械的に取り出せます。答案の中身を検討する前に置く確認工程です。

筆記のあとに来るもの — 合格発表から口頭試験へ

筆記試験の答案は返却されないため、自分が何を書いたかを再現できるのは記憶が新しいうちだけです。

令和8年度の筆記試験合格発表は11月上旬(11月4日(水)予定)、その後、令和8年12月上旬から令和9年1月中旬にかけて口頭試験が実施されます。受験申込み案内は採点結果の内容について、答案用紙の開示を含めて問合せには一切応じないとしています。11月になってから、必須科目Ⅰでどの問題を選び3つの技術課題に何を挙げたかを確認する手段はありません。

口頭試験は筆記試験における記述式問題の答案及び業務経歴を踏まえて実施されると定められており、必須科目Ⅰで書いた技術課題と解決策は試験官の手元にある材料の一部になります。発表から本番までの逆算は筆記合格発表(11月4日予定)から口頭試験まで、試問事項と配点の構造は口頭試験の試問事項と配点(令和8年度)にまとめています。発表当日から本番までに何を準備するかは技術士 口頭試験 対策 — 筆記合格発表(11月4日予定)から本番までに公式資料で準備できること全部に順番どおりに並べています。

まとめ:次に取る3つの行動