令和8年度の技術士第二次試験 建設部門 河川、砂防及び海岸・海洋の選択科目Ⅱ-2は、Ⅱ-2-1が気候変動を踏まえた計画の策定・変更、Ⅱ-2-2が地区防災計画の策定支援を主題としており、どちらも(1)調査,検討すべき事項とその内容、(2)業務の手順と項目ごとの留意点・工夫点、(3)関係者との調整方策、の3段で書かせる構成です。(1)は令和3〜6年度の8題が使っていた「収集・整理すべき資料や情報」の型ではなく、令和元・2年度と令和7年度の「調査,検討すべき事項」の型で、(2)は2題とも「手順を列挙して,それぞれの項目ごとに」留意点を書く指定になりました。
この記事は、令和9年度以降に河川、砂防及び海岸・海洋を選択する人と、令和8年7月の筆記試験を受けて自分の答案を振り返っている人に向けたものです。模範解答や解答例は載せません。載せるのは、設問が「何を書け」と指示しているかの分解と、令和元年度から令和8年度までの河川 選択科目Ⅱ-2 16題を並べて数えた出題テーマ・小問の型の推移です。
根拠は日本技術士会が公表している各年度の試験問題と、令和8年度の受験申込み案内の原文だけです。テーマ名は設問文中の語をそのまま使い、予備校の解説やまとめ記事は根拠にしていません。
令和8年度の河川 Ⅱ-2 は2設問から1設問・答案用紙2枚
まず出題の指示を確認します。選択科目Ⅱ-2は2設問のうち1設問を選び、青色の答案用紙2枚を用いてまとめる形式です。
Ⅱ-2 次の2設問(Ⅱ-2-1,Ⅱ-2-2)のうち1設問を選び解答せよ。(青色の答案用紙に解答設問番号を明記し,答案用紙2枚を用いてまとめよ。)
答案用紙は1枚600字なので、2枚で1,200字です。選択科目Ⅱ-2の配点は20点、選択科目ⅡとⅢを合わせた解答時間は3時間30分(13:00〜16:30)で、この時間内にⅡの3枚とⅢの3枚の計6枚を書きます。配点と時間の内訳は技術士二次試験の科目構成と配点・合否決定基準、答案用紙そのものの規定は筆記試験の答案用紙 — 600字の規定と合計9枚の使い方にまとめています。令和元年度だけは指示が「答案用紙2枚以内にまとめよ」で、色の指定もありませんでした。
Ⅱ-2-1(気候変動を踏まえた計画の策定・変更)が指示していること
Ⅱ-2-1 気候変動による災害の激甚化・頻発化を踏まえ,河川,砂防及び海岸・海洋分野に関する計画を策定・変更することとなった。あなたがこの業務を担当責任者として進めるに当たり,下記の内容について記述せよ。なお,解答に当たっては,河川整備基本方針,土砂・洪水氾濫対策計画,海岸保全基本計画のいずれか1つについて策定又は変更する業務を選び解答すること。 (1)業務を進めるに当たり,調査,検討すべき事項とその内容について説明せよ。 (2)業務を進める手順を列挙して,それぞれの項目ごとに留意すべき点,工夫を要する点を述べよ。 (3)業務を効率的,効果的に進めるための関係者との調整方策について述べよ。
小問ごとに取り出すと、書くべき要素は次のとおりです。
| 小問 | 書けと指示されていること | 数の指定 |
|---|---|---|
| 前提 | 3つの計画のいずれか1つを選び、策定又は変更の業務として解答 | 計画は1つ |
| (1) | 調査,検討すべき事項と、その内容 | なし |
| (2) | 業務を進める手順の列挙と、項目ごとの留意すべき点・工夫を要する点 | なし(項目ごと) |
| (3) | 業務を効率的,効果的に進めるための関係者との調整方策 | なし |
前提の「いずれか1つについて策定又は変更する業務を選び」は、計画の名称を設問が3つ名指ししたうえで選ばせる指定です。令和元〜7年度の14題では、選ばせる対象は「河川,砂防及び海岸・海洋のいずれかの分野」や「洪水,土砂災害又は高潮のうち1つの災害」で、計画の名称を並べて選ばせた題はありませんでした。
Ⅱ-2-2(地区防災計画の策定支援)が指示していること
Ⅱ-2-2 自然災害から命を守り,被害を最小化するためには,防災施設整備などのハード対策や防災情報の提供などのソフト対策に加えて,地域コミュニティにおける共助による防災活動の強化を図ることが重要である。 (中略) (1)業務を進めるに当たり,調査,検討すべき事項とその内容について説明せよ。 (2)業務を進める手順を列挙して,それぞれの項目ごとに,留意すべき点,工夫を要する点を述べよ。 (3)効率的,効果的な業務遂行のために調整が必要となる関係者を列記し,それぞれとの連携・調整方策について述べよ。
中略した部分で、業務は「水害や土砂災害,津波等のリスクに対して避難を誘導する地区防災計画(自治会等の地域コミュニティレベルの計画)の策定を支援する業務責任者」として進めるものと指定されています。(1)(2)はⅡ-2-1とほぼ同じ文で、違いは(3)です。
| 小問 | Ⅱ-2-1 | Ⅱ-2-2 |
|---|---|---|
| 立場 | 担当責任者 | 策定を支援する業務責任者 |
| 対象の選択 | 3つの計画から1つを選ぶ | 選択の指定なし(水害や土砂災害,津波等) |
| (3)で書くもの | 関係者との調整方策 | 関係者の列記と、それぞれとの連携・調整方策 |
Ⅱ-2-2の(3)は「関係者を列記し,それぞれとの」と重ねており、関係者の名前を並べるだけでなく、1者ごとに連携・調整方策を対にして書く指定です。関係者を列記させる(3)は、令和元〜8年度の16題でこの1題だけです。
答案用紙2枚・1,200字に、3つの小問をどう配分するか
公表問題にも受験申込み案内にも小問ごとの字数指定はありません。判断材料になるのは、受験申込み案内が示している選択科目Ⅱ-2の出題内容と評価項目です。
2.「選択科目」についての応用能力に関するもの (中略) 出題内容 「選択科目」に関係する業務に関し、与えられた条件に合わせて、専門知識や実務経験に基づいて業務遂行手順が説明でき、業務上で留意すべき点や工夫を要する点等についての認識があるかどうかを問う。 (中略) 評価項目 技術士に求められる資質能力(コンピテンシー)のうち、専門的学識、マネジメント、リーダーシップ、コミュニケーションの各項目
評価項目に「マネジメント、リーダーシップ」が入るのは、筆記試験の3つの問題の種類のうち選択科目Ⅱ-2だけです。令和8年度の河川Ⅱ-2は、(2)が出題内容の「業務遂行手順」「留意すべき点や工夫を要する点」をほぼそのまま小問にし、(3)が関係者との調整を求める形で、出題内容の文言と小問の対応が読み取りやすい構成です。
配分そのものは受験者に委ねられており、正解の比率は公表されていません。1,200字を3小問で等分すると1問400字です。ただし(2)は「手順を列挙して,それぞれの項目ごとに」なので、手順を4項目挙げれば留意点・工夫点の記述も4組になり、(2)だけで記述の単位が最も多くなります。Ⅱ-2-2を選んだ場合は(3)も関係者の数だけ組が増えます。過去問で答案構成を練習するときは、まず「項目ごと」「それぞれ」が付いて記述が増える小問を特定し、そこから字数を確保する順序になります。
令和元〜8年度の河川 選択科目Ⅱ-2 は何を出してきたか(16題の一覧)
河川の選択科目Ⅱ-2は全年度で2設問から1設問を選ぶ形式なので、8年で16題です。テーマ名は設問文中の語をそのまま使いました。
| 年度 | Ⅱ-2-1 の主題 | Ⅱ-2-2 の主題 |
|---|---|---|
| 令和元年度 | 環境に配慮した災害復旧工事の検討業務 | 防災地域づくりの検討業務 |
| 令和2年度 | 市町村における警戒避難体制の整備にかかる業務 | 再度災害防止対策に関するプロジェクトの企画・立案 |
| 令和3年度 | 施設の老朽化(長寿命化)対策に関する計画策定の業務 | 洪水,高潮,土砂災害の被害想定区域の設定に関する調査・検討の業務 |
| 令和4年度 | 震度7の巨大地震で被害が発生した防災施設の被災状況の把握や,応急措置 | 「水害・土砂災害を対象とした避難行動の学習」を目的とした住民講習会 |
| 令和5年度 | 関係者が連携する総合的な土砂管理を進めるための計画策定 | 災害復旧事業の申請から実施まで |
| 令和6年度 | ハード対策及びソフト対策が一体となった防災まちづくりの計画策定 | 市町村長による避難情報の発令判断の支援 |
| 令和7年度 | UAVを活用した被災状況や被災施設等の把握 | 多段階の浸水想定図及び水害リスクマップの作成 |
| 令和8年度 | 河川整備基本方針,土砂・洪水氾濫対策計画,海岸保全基本計画のいずれかの策定・変更 | 地区防災計画の策定支援 |
主題と並べて、小問の型の変わり方を見ます。
| 年度 | (1)の問い方 | (2)の問い方 | (3)の問い方 |
|---|---|---|---|
| 令和元年度 | 調査,検討すべき事項とその内容 | 業務を進める手順(留意すべき点,工夫を要する点を含めて) | 関係者との調整方策 |
| 令和2年度 | 調査,検討すべき事項とその内容 | 業務を進める手順(留意すべき点,工夫を要する点を含めて) | 関係者との調整方策 |
| 令和3年度 | 収集・整理すべき資料や情報と、その目的や内容 | 業務を進める手順と、留意すべき点や工夫を要する点 | 調整方策(Ⅱ-2-1)/調整内容(Ⅱ-2-2) |
| 令和4年度 | 収集・整理すべき資料や情報と、その目的や内容 | 調査・検討の手順(Ⅱ-2-1)/説明内容の骨子(Ⅱ-2-2) | 関係者との調整方策 |
| 令和5年度 | 収集・整理すべき資料や情報と、その目的や内容 | 計画を策定する手順(Ⅱ-2-1)/災害復旧事業の実施までの手順(Ⅱ-2-2) | 関係者との調整内容 |
| 令和6年度 | 収集・整理すべき資料や情報と、その目的や内容 | 計画を策定する手順(Ⅱ-2-1)/業務の項目について3つ(Ⅱ-2-2) | 関係者との調整方策 |
| 令和7年度 | あらかじめ調査,検討すべき事項とその内容 | 業務を進める手順(Ⅱ-2-1)/手順を列挙して,それぞれの項目ごとに(Ⅱ-2-2) | 関係者との調整方策 |
| 令和8年度 | 業務を進めるに当たり,調査,検討すべき事項とその内容 | 手順を列挙して,それぞれの項目ごとに | 調整方策(Ⅱ-2-1)/関係者の列記と連携・調整方策(Ⅱ-2-2) |
この16題から数えられる事実は4つです。
1つ目は、(1)の問い方が8題ずつに分かれていることです。「収集・整理すべき資料や情報」とその目的・内容を問う型は令和3〜6年度の8題、「調査,検討すべき事項とその内容」を問う型は令和元・2年度と令和7・8年度の8題です。令和7年度に後者の型に戻り、令和8年度も続きました。
2つ目は、(3)は16題すべてが関係者との調整を問うていることです。語は「調整方策」が13題(令和8年度Ⅱ-2-2の「連携・調整方策」を含む)、「調整内容」が令和3年度Ⅱ-2-2と令和5年度の2題の計3題です。関係者を列記させたのは令和8年度Ⅱ-2-2だけです。
3つ目は、(2)で手順を問わなかった題が2題あることです。令和4年度Ⅱ-2-2は講習会での「説明内容の骨子」、令和6年度Ⅱ-2-2は発令判断を支援するために行う「業務の項目について3つ」で、残る14題は手順を問うています。「手順を列挙して,それぞれの項目ごとに」の形は令和7年度Ⅱ-2-2と令和8年度の2題の計3題です。
4つ目は、避難を主題にした題が4題あることです。令和2年度Ⅱ-2-1の警戒避難体制、令和4年度Ⅱ-2-2の避難行動の学習、令和6年度Ⅱ-2-2の避難情報の発令判断の支援、令和8年度Ⅱ-2-2の避難を誘導する地区防災計画で、4題中3題がⅡ-2-2側です。被災後の対応(災害復旧工事・再度災害防止・応急措置・災害復旧事業・UAVによる被災状況の把握)は令和元・2・4・5・7年度の5題にあります。
選ばせる対象の指定も変わっています。「河川,砂防及び海岸・海洋のいずれかの分野」を選ばせた(または選択した分野の明記を求めた)のは令和元年度Ⅱ-2-1・令和2〜4年度の6題・令和5年度Ⅱ-2-2の計8題、災害の種類を選ばせたのは令和元年度Ⅱ-2-2と令和6年度Ⅱ-2-2の2題、計画の名称から選ばせたのは令和8年度Ⅱ-2-1の1題で、残る5題は選択の指定がありません。
リードに「気候変動」の語が入ったのは、令和6年度Ⅱ-2-1(気候変動等により水災害リスクが増大する中)と令和8年度Ⅱ-2-1の2題です。次年度に何が出るかは公表されておらず、この推移から出題を予想することはできません。
同じ令和8年度の河川 選択科目Ⅲの分解は令和8年度 河川 選択科目Ⅲ(Ⅲ-1・Ⅲ-2)の設問の要求事項、他科目のⅡ-2の並びは令和8年度 道路 選択科目Ⅱ-2の設問の要求事項と令和8年度 施工計画 選択科目Ⅱ-2の設問の要求事項、建設部門の他年度の設問は技術士二次試験 建設部門 過去問 — 令和元〜8年度96冊728設問の索引にあります。
設問から答案を組み立てる手順
過去問を使うときにまずやることは、答案を書くことではなく設問の指示を漏れなく取り出すことです。令和8年度の河川Ⅱ-2の2設問を材料にすると、手順は次のようになります。
- 前提の選択を最初に確定する。 Ⅱ-2-1は3つの計画のうち1つ、かつ「策定又は変更」のどちらの業務かを選ぶ指定です。どれを選んだかが答案から読み取れないと、(1)以降の事項が何のための調査かが定まりません。
- (1)は「事項」と「その内容」を対にする。 事項名を並べるだけでは「その内容について説明せよ」の後半が欠けます。
- (2)は手順を先に番号付きで列挙し、各項目に留意点・工夫点を付ける。 「それぞれの項目ごとに」なので、留意点を最後にまとめて書くと指示の形と合いません。
- (3)は誰と何を調整するかを具体にする。 Ⅱ-2-2は関係者の列記が要求に含まれ、列記した全員について連携・調整方策が要ります。
- 状況設定の語を拾う。 Ⅱ-2-1は「気候変動による災害の激甚化・頻発化を踏まえ」、Ⅱ-2-2は「共助による防災活動の強化」「自治会等の地域コミュニティレベルの計画」「支援する業務責任者」を指定しています。(1)の調査事項や(3)の関係者は、ここから引きます。
- 古い年度を解くときは、その年の(1)(2)の型を先に確認する。 令和3〜6年度の(1)は資料や情報の型、令和4年度Ⅱ-2-2と令和6年度Ⅱ-2-2の(2)は手順ではない型で、令和8年度の型で解き直すなら読み替えが要ります。
この6項目は、どの年度の選択科目Ⅱ-2でも設問文から機械的に取り出せます。答案の中身を検討する前に置く確認工程です。
筆記のあとに来るもの — 合格発表から口頭試験へ
筆記試験の答案は返却されないため、自分が何を書いたかを再現できるのは記憶が新しいうちだけです。
令和8年度の筆記試験合格発表は11月上旬(11月4日(水)予定)、その後、令和8年12月上旬から令和9年1月中旬にかけて口頭試験が実施されます。受験申込み案内は採点結果の内容について、答案用紙の開示を含めて問合せには一切応じないとしています。11月になってから、河川のⅡ-2でどちらの設問と計画を選び、どんな手順を書いたかを確認する手段はありません。
口頭試験は筆記試験における記述式問題の答案及び業務経歴を踏まえて実施されると定められており、Ⅱ-2で書いた業務遂行手順と関係者との調整方策は、口頭試験の試問事項であるマネジメント・リーダーシップと同じ領域にあります。発表から本番までの逆算は筆記合格発表(11月4日予定)から口頭試験まで、試問事項と配点の構造は口頭試験の試問事項と配点(令和8年度)にまとめています。発表当日から本番までに何を準備するかは技術士 口頭試験 対策 — 筆記合格発表(11月4日予定)から本番までに公式資料で準備できること全部に順番どおりに並べています。
まとめ:次に取る3つの行動
- 令和8年度の2題で、(1)(2)(3)の要求を見出しとして書き出す。 (1)(2)はほぼ同じ文なので、違いは前提の選択と(3)の関係者の列記です。並べると、状況設定の違いがどこに効くかが見えます。
- 令和6年度と令和8年度の(1)を並べて解く。 「収集・整理すべき資料や情報」と「調査,検討すべき事項」は、同じ業務でも書く対象が変わります。型の違いを自分の言葉で説明できるかを確かめます。
- 筆記の答案を再現したメモを、口頭試験まで保管する。 答案は開示されず、口頭試験は答案と業務経歴を踏まえて実施されます。記憶が新しいうちに書き起こしておく作業は、筆記直後にしかできません。