技術士第二次試験 建設部門の過去問は、日本技術士会が公表している令和元年度から令和8年度までの8年度分で、1年度あたり12冊(必須科目Ⅰが1冊・選択科目11科目が各1冊)、合計96冊・728設問です。設問数と答案用紙の枚数は令和2年度以降7年間まったく動いておらず、8年間で動いてきたのは小問の問い方の細かさだけ、というのがこの96冊を並べて読める事実です。
この記事は、過去問をどの年度からどの順に解くかを決めたい人と、自分の選択科目で何が繰り返し問われてきたかを先に把握したい人に向けたものです。模範解答・解答例は載せません。載せるのは、公表問題そのものから数えられる事実(冊数・設問数・テーマ・小問の指示文の変化)だけです。
根拠は日本技術士会が公表している建設部門の試験問題PDFで、令和元年度から令和8年度までの96冊すべてを転記して数えた結果です。年度ごとの問題PDFは各年度の合格発表ページから公開されており、この記事で引用した冊子のURLは記事末の出典欄に載せています。
建設部門の過去問は何年分・何冊あるのか
公表されているのは令和元年度から令和8年度までの8年度分、1年度12冊の合計96冊です。12冊の内訳は必須科目Ⅰが1冊と、選択科目11科目(土質及び基礎/鋼構造及びコンクリート/都市及び地方計画/河川、砂防及び海岸・海洋/港湾及び空港/電力土木/道路/鉄道/トンネル/施工計画、施工設備及び積算/建設環境)が各1冊です。選択科目の冊子はⅡとⅢが1冊にまとまっています。
96冊に載っている設問を区分別に数えると次のようになります。
| 年度 | 必須Ⅰ | 選択Ⅱ-1 | 選択Ⅱ-2 | 選択Ⅲ | 合計 |
|---|---|---|---|---|---|
| 令和元年度 | 2 | 48 | 24 | 24 | 98 |
| 令和2〜8年度(各年度とも同数) | 2 | 44 | 22 | 22 | 90 |
| 8年度の合計 | 16 | 356 | 178 | 178 | 728 |
令和元年度だけ8設問多いのは、鋼構造及びコンクリートがA(鋼構造)とB(コンクリート)のグループ制で、Ⅱ-1が8設問・Ⅱ-2が4設問・Ⅲが4問題だったためです。令和2年度からこの科目も他の科目と同じ4設問・2設問・2問題に統一されました。建設部門の11科目それぞれの範囲は建設部門の選択科目11科目一覧で扱っています。
自分が受ける科目に限れば、8年分は必須科目Ⅰの16題と、選択科目の1科目分(Ⅱ-1が32設問前後・Ⅱ-2が16設問・Ⅲが16問題)です。96冊すべてを読む必要はありません。
1冊の骨格 — 選択方式・枚数・小問の数は動いていない
問題冊子の1行目には、何問から何問を選び、答案用紙を何枚使うかが必ず書かれています。令和8年度の道路(選択科目Ⅱ・Ⅲ)のⅢは次のとおりです。
Ⅲ 次の2問題(Ⅲ-1,Ⅲ-2)のうち1問題を選び解答せよ。(赤色の答案用紙に解答問題番号を明記し,答案用紙3枚を用いてまとめよ。) (中略) (1)自動物流道路の実現に向けて,道路に携わる技術者として,多面的な観点から課題を3つ抽出し,それぞれの観点を明記したうえで,その課題を示せ。 (2)前問(1)で抽出した課題のうち,最も重要と考える課題を1つ挙げ,その課題に対する複数の解決策を示せ。 (3)前問(2)で示したすべての解決策を実行しても新たに生じうるリスクとそれへの対策について,専門技術を踏まえた考えを示せ。
この、2問題から1問題・答案用紙3枚・小問(1)〜(3)という形は、科目が変わっても年度が変わっても同じです。96冊を通すと骨格は次の表に収まります。
| 区分 | 選択方式 | 答案用紙 | 小問の構成 | 8年度での変動 |
|---|---|---|---|---|
| 必須科目Ⅰ | 2問題から1問題 | 3枚 | (1)〜(4) | なし(令和元年度のみ「以内」表記) |
| 選択科目Ⅱ-1 | 4設問から1設問 | 1枚 | 小問なし(一問一答型) | 令和元年度の鋼構造及びコンクリートのみ8設問 |
| 選択科目Ⅱ-2 | 2設問から1設問 | 2枚 | (1)〜(3) | 令和元年度の同科目のみ4設問 |
| 選択科目Ⅲ | 2問題から1問題 | 3枚 | (1)〜(3) | 令和元年度の同科目のみ4問題 |
合計は必須3枚+選択6枚の9枚です。答案用紙1枚あたりの字数の規定と、枚数を外したときの扱いは筆記試験の答案用紙 — 24字×25行=600字の規定と合計9枚の使い方にまとめています。科目ごとの配点と合否決定基準は技術士二次試験の科目構成と配点・合否決定基準を参照してください。
過去問を解く前に決まるのは、この骨格から逆算した分量です。選択科目Ⅲなら3枚(1,800字)に小問3つ、必須科目Ⅰなら3枚に小問4つを配分することになります。
必須科目Ⅰ 16題は何を問うてきたか
必須科目Ⅰは全年度で2問題から1問題を選ぶ形式なので、8年で16題です。テーマは次のとおりでした。
| 年度 | Ⅰ-1 | Ⅰ-2 |
|---|---|---|
| 令和元年度 | 建設分野の生産性向上 | 国土強靱化と大規模災害 |
| 令和2年度 | 中小建設業の担い手確保 | 社会インフラの戦略的メンテナンス |
| 令和3年度 | 廃棄物と循環型社会構築 | 風水害の激甚化・頻発化対策 |
| 令和4年度 | インフラ分野のDX推進 | 2050カーボンニュートラル |
| 令和5年度 | 巨大地震に屈しない社会 | 社会資本メンテナンス第2フェーズ |
| 令和6年度 | 第三次国土形成計画と地域社会 | 災害復旧・復興のDX活用 |
| 令和7年度 | 持続可能な建設業の実現 | 経済成長と社会資本整備 |
| 令和8年度 | 新技術・DXとインフラの価値 | グリーンインフラと共生社会 |
16題を系統で分けると、防災・災害(地震・風水害・国土強靱化・復旧復興)が4題、メンテナンス・老朽化が2題、DX・新技術・生産性が3題、環境(カーボンニュートラル・循環型社会・グリーンインフラ)が3題、担い手・建設業の持続可能性が2題、国土・社会資本計画が2題です。
ここから読める構図は1つだけです。**8年間すべての年度で、2問のうち1問が防災かメンテナンスの系統に入り、もう1問がDX・環境・担い手・国土計画のいずれかから出ています。**令和元年度から令和8年度まで例外はありません。ただしこれは過去8回の結果であって、次年度の出題を保証するものではありません。
令和8年度のⅠ-1は、次のように観点の対象まで指定しています。
(1)新技術・DXの活用によるインフラの価値向上を進めるに当たり,技術者としての立場で多面的な観点から3つの技術課題を抽出し,それぞれの観点を明記したうえで,その技術課題の内容を示せ。(*) なお,観点はインフラの価値に関するものとする。 (*)解答の際には必ず観点を述べてから技術課題を示せ。
令和8年度の必須科目Ⅰ2題の設問を小問ごとに分解したものは令和8年度 建設部門 必須科目Ⅰ(Ⅰ-1・Ⅰ-2)の設問の要求事項にあります。
令和8年度の選択科目Ⅲは11科目で何が出たのか
選択科目Ⅲも2問題から1問題を選ぶ形式です。令和8年度の11科目のテーマは次のとおりでした。
| 選択科目 | Ⅲ-1 | Ⅲ-2 |
|---|---|---|
| 土質及び基礎 | 複合災害と盛土被害軽減 | 地下インフラ老朽化と陥没 |
| 鋼構造及びコンクリート | 巨大地震と事前防災強化 | 担い手不足と品質確保 |
| 都市及び地方計画 | 立地適正化計画の評価・見直し | 古民家の観光資源活用 |
| 河川、砂防及び海岸・海洋 | 複合災害の防止・軽減対策 | 水災害の事業評価手法 |
| 港湾及び空港 | 国際コンテナ戦略港湾施策 | 港湾空港施設の更新推進 |
| 電力土木 | 発電設備リプレースと更新 | 技術継承と人材育成 |
| 道路 | 自動物流道路の実現 | 道路の災害対応力強化 |
| 鉄道 | 鉄道施設の防災・減災対策 | 鉄道工事のコスト縮減 |
| トンネル | 近接構造物とトンネル建設 | 都市部工事の環境保全 |
| 施工計画、施工設備及び積算 | 外国人労働者の活用 | 建設工事の猛暑対策 |
| 建設環境 | 生態系ネットワークの構築 | 循環資源の利用拡大 |
8年分を並べると、科目によってはⅢ-1とⅢ-2の軸が固定されています。トンネルはⅢ-1が山岳工法系・Ⅲ-2が都市部(開削・シールド)系という対が令和2年度から令和8年度まで7年連続です。建設環境は生態系・生物多様性の系統と脱炭素・都市構造の系統の対が令和元年度から令和8年度まで8年連続で、生態系ネットワークは令和3・4・6・8年度に反復して出ています。施工計画、施工設備及び積算は担い手や労働条件といった人の側面と、契約・入札・積算といった制度の側面の2軸がほぼ毎年で、技術論より制度論の比重が11科目中もっとも高い科目です。
自分の科目の8年分を並べて対の軸を先に確認しておくと、Ⅲ-1とⅢ-2のどちらを選ぶかを本番で迷う時間が減ります。
表の科目名は、その科目の令和8年度Ⅲ-1・Ⅲ-2を小問ごとに分解し、令和元〜8年の出題テーマ推移を並べた記事へのリンクです(11科目すべて公開済み)。
8年で変わったのは問い方の粒度だけ
設問数も枚数も動いていない一方で、小問の指示文は毎年のように細かくなっています。公表問題から確認できる変化点は次のとおりです。
| 年度 | 変化点 |
|---|---|
| 令和元年度 | 必須科目Ⅰが記述式になった初年度。枚数指定は「以内」、答案用紙の色指定なし |
| 令和2年度 | 枚数指定が「答案用紙3枚を用いてまとめよ」の表現に変更。答案用紙の色指定(Ⅱ-1緑・Ⅱ-2青・Ⅲ赤)が導入。以後令和8年度まで不変 |
| 令和3年度 | 必須Ⅰ(1)が「課題を抽出し分析せよ」から「3つ課題を抽出し,それぞれの観点を明記したうえで」に変更。課題数が3に固定 |
| 令和4年度 | 必須Ⅰ(3)に「専門技術を踏まえた」が常設化。施工計画のⅡ-2に現場責任者のリーダーシップを問う設問が登場 |
| 令和5年度 | 施工計画のⅡ-2にPDCAサイクル(計画・検証・是正)を名指しする設問が登場。利害関係者の列記と調整内容まで指定 |
| 令和6年度 | 必須Ⅰ(1)に脚注が新設され、観点を先に述べる指示が明文化。人員や予算の制約が前提条件として本文に追加 |
| 令和7年度 | 必須Ⅰが課題から技術課題へ語を変更。鋼構造及びコンクリートのⅡ-2で①②③の枝番指定が初登場 |
| 令和8年度 | 必須Ⅰ(1)で観点の対象まで指定。施工計画のⅡ-2で枝番指定に加え、評価しない書き方が明示された |
令和元年度の必須科目Ⅰは、要求がまだ短い文でした。
(1)建設分野における生産性の向上に関して,技術者としての立場で多面的な観点から課題を抽出し分析せよ。 (中略) (3)(2)で提示した解決策に共通して新たに生じうるリスクとそれへの対策について述べよ。
令和6年度には、答案の順序そのものが脚注で指定されました。
(1)全国的なネットワークを形成するとともに地域・拠点間の連結及び地域内ネットワークの強化を目指す社会資本整備を進めるに当たり,投入できる人員や予算に限りがあることを前提に,技術者としての立場で多面的な観点から3つ課題を抽出し,それぞれの観点を明記したうえで,課題の内容を示せ。 (中略) (※)解答の際には必ず観点を述べてから課題を示せ
令和元年度の必須科目Ⅰ(1)
令和8年度の必須科目Ⅰ(1)
令和8年度の選択科目Ⅱ-2では、書いても評価されない記述が明示されました。施工計画、施工設備及び積算のⅡ-2-1(3)は次のとおりです。
(3)遮音壁の設置や低騒音機械の採用等の対策を行っていたにもかかわらず,騒音・振動に関する苦情・要望が複数寄せられた。その内容を推察のうえ,あなたは,①どのような関係者に対して,②いかなる解決策を提示し,③自らが主体となってどのように調整するか述べよ。なお,単に「丁寧な説明」や「わかりやすく情報提供を行う」といった類の記述は評価しない。
8年間の方向は一貫しています。答案の形を先に指定する方向へ、年ごとに細かくなっています。古い年度の過去問をそのまま解くと、令和8年度の指示(3つ・観点を先に・枝番で分ける)を満たさない答案の練習になりかねません。
96冊をどの順に開くか、そのあとに来るもの
過去問を開く順序は、上の事実から機械的に決まります。
- 自分の選択科目の令和8年度1冊を先に開く。 最新年度が現在の問い方の基準です。Ⅱ-1・Ⅱ-2・Ⅲの指示文の細かさを最初に確認します。
- 同じ科目を令和7年度・令和6年度とさかのぼる。 令和6年度以降は問い方がほぼ同じなので、3年分は同じ型で練習できます。
- 令和5年度より前は、テーマの参照に使う。 問い方が違うため、答案の型の練習より、何が問われてきたかの把握に向いています。
- 必須科目Ⅰは16題すべてに目を通す。 8年で16題しかなく、系統も6つに収まります。
- 設問の要求事項を分解してから書き始める。 数の指定がある小問(3つ・複数・2つ)と、順序の指定(観点を先に)は削れません。
筆記試験のあとに来るのは口頭試験です。令和8年度の筆記試験合格発表は11月上旬(11月4日(水)予定)で、その後、令和8年12月上旬から令和9年1月中旬にかけて口頭試験が実施されます。口頭試験は筆記試験における記述式問題の答案及び業務経歴を踏まえて実施されると定められているため、過去問で練習した答案の論理は、そのまま口頭で説明を求められ得る材料になります。
発表から本番までの逆算は筆記合格発表(11月4日予定)から口頭試験まで、試問事項と配点の構造は口頭試験の試問事項と配点(令和8年度)にまとめています。
まとめ:次に取る3つの行動
- 自分の科目の8年分(8冊)と必須科目Ⅰの8冊、計16冊だけをそろえる。 96冊すべては要りません。冊子のURLは各年度の合格発表ページから取得できます。
- 令和8年度の1冊で、指示文の細かさを確認してから古い年度に戻る。 3つ・観点を先に・枝番で分ける・評価しない書き方の明示は、いずれも直近の年度で加わった指定です。古い年度の型で練習を積むと、この指定を外します。
- 自分の科目のⅢ-1とⅢ-2の軸を8年分で並べる。 トンネルや建設環境のように対の軸が固定されている科目では、本番でどちらを選ぶかの判断が事前に済みます。