令和8年度の技術士第二次試験 建設部門 鉄道の選択科目Ⅲは、Ⅲ-1が鉄道施設の防災・減災対策、Ⅲ-2が鉄道工事におけるコスト縮減・コスト抑制を主題とし、どちらも(1)技術課題を3つ抽出→(2)最も重要な技術課題への解決策→(3)すべての解決策を実行しても生じうるリスクと対策の3段で書かせる構成です。令和8年度は、2問の(2)と(3)が一字一句同じ年度です。 2問の違いは、(1)の主題と、Ⅲ-2だけに付いた例を挙げよという指示の2点に限られます。
この記事は、令和9年度以降に鉄道を選択する人と、令和8年7月の筆記試験を受けて自分の答案を振り返っている人に向けたものです。模範解答や解答例は載せません。載せるのは、設問が何を書けと指示しているかの分解と、令和元年度から令和8年度までの鉄道 選択科目Ⅲ 16題を並べて数えた出題テーマ・設問形式の推移です。
根拠は日本技術士会が公表している各年度の試験問題の原文だけです。テーマ名は設問文中の語をそのまま使い、予備校の解説やまとめ記事は根拠にしていません。
令和8年度の鉄道Ⅲは何を要求しているか
まず出題の指示を確認します。選択科目Ⅲは2問題のうち1問題を選び、赤色の答案用紙3枚を用いてまとめる形式です。
Ⅲ 次の2問題(Ⅲ-1,Ⅲ-2)のうち1問題を選び解答せよ。(赤色の答案用紙に解答問題番号を明記し,答案用紙3枚を用いてまとめよ。)
答案用紙は1枚600字なので、3枚で1,800字です。選択科目Ⅲの配点は30点、選択科目ⅡとⅢを合わせた解答時間は3時間30分(13:00〜16:30)で、この時間内にⅡの3枚とⅢの3枚の計6枚を書きます。配点と時間の内訳は技術士二次試験の科目構成と配点・合否決定基準、答案用紙そのものの規定は筆記試験の答案用紙 — 600字の規定と合計9枚の使い方にまとめています。
Ⅲ-1(鉄道施設の防災・減災対策)が指示していること
Ⅲ-1 鉄道施設の自然災害による被害は,高経年化や激甚化・頻発化により増加している。 (中略) (1)鉄道施設の防災・減災対策について,技術者としての立場で多面的な観点から3つの技術課題を抽出し,それぞれの観点を明記したうえで,その技術課題の内容を示せ。 (2)前問(1)で抽出した技術課題のうち最も重要と考える技術課題を1つ挙げ,その技術課題に対する複数の解決策を,専門技術用語を交えて示せ。 (3)前問(2)で示したすべての解決策を実行しても新たに生じうるリスクとそれへの対策について,専門技術を踏まえた考えを示せ。
小問ごとに、何をいくつ書けと言われているかを取り出すと次のようになります。
| 小問 | 書けと指示されているもの | 数の指定 | 見落としやすい条件 |
|---|---|---|---|
| (1) | 観点と、その観点における技術課題の内容 | ちょうど3つ | 観点を明記したうえでという順序の指定がある/立場は技術者としての立場でとされ、建設部門という限定語は付いていない |
| (2) | 最も重要と考える技術課題1つと、それに対する解決策 | 技術課題は1つ、解決策は複数 | 解決策は専門技術用語を交えて示す/なぜ最も重要と考えたかの理由は求められていない |
| (3) | すべての解決策を実行しても新たに生じうるリスクと、その対策 | 指定なし | 前提は(2)のすべての解決策を実行した状態/専門技術を踏まえた考えを示す |
状況設定の後半には、熟練者の大量退職が続き暗黙知の散逸・教育負荷が増大しているという記述が置かれています。ただし(1)が抽出させるのは鉄道施設の防災・減災対策についての技術課題であり、人材の話は課題を導く前提として置かれています。
Ⅲ-2(鉄道工事のコスト縮減・コスト抑制)が指示していること
Ⅲ-2 近年,賃金や資材価格等の高騰に伴い,工事費の上昇が続き,各地の新線建設,連続立体交差事業で計画の見直しや中止が生じている。 (中略) (1)鉄道工事におけるコスト縮減・コスト抑制例を挙げ,技術者としての立場で多面的な観点から3つの技術課題を抽出し,それぞれの観点を明記したうえで,その技術課題の内容を示せ。 (2)前問(1)で抽出した技術課題のうち最も重要と考える技術課題を1つ挙げ,その技術課題に対する複数の解決策を,専門技術用語を交えて示せ。 (3)前問(2)で示したすべての解決策を実行しても新たに生じうるリスクとそれへの対策について,専門技術を踏まえた考えを示せ。
2問を並べると、違いは(1)だけです。
| 比較する点 | Ⅲ-1 | Ⅲ-2 |
|---|---|---|
| (1)の主題 | 鉄道施設の防災・減災対策 | 鉄道工事におけるコスト縮減・コスト抑制 |
| (1)の追加の指示 | なし | 例を挙げたうえで技術課題を抽出する |
| (1)の技術課題の数 | 3つ | 3つ |
| (2) | 技術課題1つ+解決策(複数)を専門技術用語を交えて | Ⅲ-1と同文 |
| (3) | すべての解決策を実行しても新たに生じうるリスクと対策 | Ⅲ-1と同文 |
(2)と(3)が2問で同文なのは、答案の後半2枚の骨組みをどちらの問題でも共通に準備できるという意味です。 差が出るのは(1)で、Ⅲ-2はコスト縮減・コスト抑制の例を先に挙げることを求めています。例を挙げずに技術課題3つから書き始めると、Ⅲ-2ではこの一句の指示に答えていない答案になります。
答案用紙3枚・1,800字に、小問3つをどう割り振るか
公表問題にも受験申込み案内にも小問ごとの字数指定はありません。判断材料になるのは、令和8年度のⅢ-1・Ⅲ-2が要求している要素の数だけです。
| 小問 | 要求されている要素の数 |
|---|---|
| (1) Ⅲ-1 | 観点3つ+技術課題の内容3つ |
| (1) Ⅲ-2 | コスト縮減・コスト抑制例+観点3つ+技術課題の内容3つ |
| (2) 両題 | 技術課題1つ+解決策は複数(下限は2つ)・専門技術用語を交える |
| (3) 両題 | すべての解決策を実行しても新たに生じうるリスク+その対策(数の指定なし) |
1,800字を3つの小問で単純に等分すると1問あたり600字です。(1)は観点と技術課題の組を3つ書くので、600字で3組なら1組200字しか使えません。Ⅲ-2を選んだ場合はさらに例を挙げる分が加わるため、同じ600字でも組あたりに使える字数は減ります。配分そのものは受験者に委ねられており、正解の比率は公表されていません。
令和元〜8年度の鉄道Ⅲ 16題は何を出してきたか
この科目は全年度で各2問題なので、8年で16題です。テーマ名は設問文中の語をそのまま使いました。
| 年度 | 番号 | 出題テーマ(設問文中の語) |
|---|---|---|
| 令和元年度 | Ⅲ-1 | 都市鉄道における施設整備のあり方 |
| 令和元年度 | Ⅲ-2 | 地方の鉄道の持続的な運営を前提とした鉄道施設の維持管理 |
| 令和2年度 | Ⅲ-1 | 多発する水害に対し鉄道施設を強化する |
| 令和2年度 | Ⅲ-2 | 輸送障害の発生に起因する定時性の低下に対応した施設改良 |
| 令和3年度 | Ⅲ-1 | 鉄道工事における作業時間を確保する方策 |
| 令和3年度 | Ⅲ-2 | 地域鉄道における列車脱線事故の防止 |
| 令和4年度 | Ⅲ-1 | 既存の鉄道河川橋りょうの敷設状況等(防災・減災対策) |
| 令和4年度 | Ⅲ-2 | 鉄道工事のコスト縮減 |
| 令和5年度 | Ⅲ-1 | 大都市圏中心部での鉄道建設 |
| 令和5年度 | Ⅲ-2 | コンクリート高架橋・橋りょうからのコンクリート・モルタル片の剥落 |
| 令和6年度 | Ⅲ-1 | 重要な鉄道構造物における地震対策 |
| 令和6年度 | Ⅲ-2 | 鉄道におけるメンテナンス |
| 令和7年度 | Ⅲ-1 | 豪雨が起因となる被災事例 |
| 令和7年度 | Ⅲ-2 | 鉄道工事の生産性 |
| 令和8年度 | Ⅲ-1 | 鉄道施設の防災・減災対策 |
| 令和8年度 | Ⅲ-2 | 鉄道工事におけるコスト縮減・コスト抑制 |
主題の系統で数えると、番号ごとの偏りがはっきり出ます。
| 主題の系統 | 題数 | 該当する年度・番号 |
|---|---|---|
| 自然災害(水害・豪雨・地震)への対策 | 5題 | 令和2年度Ⅲ-1/令和4年度Ⅲ-1/令和6年度Ⅲ-1/令和7年度Ⅲ-1/令和8年度Ⅲ-1 |
| 工事の担い手・生産性・コスト | 4題 | 令和3年度Ⅲ-1/令和4年度Ⅲ-2/令和7年度Ⅲ-2/令和8年度Ⅲ-2 |
| 維持管理・保守・構造物の劣化 | 4題 | 令和元年度Ⅲ-2/令和3年度Ⅲ-2/令和5年度Ⅲ-2/令和6年度Ⅲ-2 |
| 都市鉄道の施設整備・建設 | 3題 | 令和元年度Ⅲ-1/令和2年度Ⅲ-2/令和5年度Ⅲ-1 |
自然災害を主題とする5題はすべてⅢ-1に、維持管理・保守を主題とする4題はすべてⅢ-2に置かれています。 逆向きの配置は8年間で1つもありません。次年度に何が出るかは公表されておらず、この表から出題を予想することはできません。
主題が近い年度どうしを並べると、繰り返しの構図も見えます。令和8年度Ⅲ-2の鉄道工事におけるコスト縮減・コスト抑制は、令和4年度Ⅲ-2の鉄道工事のコスト縮減に続く2回目です。ただし状況設定は異なり、令和4年度は人口減少と新型コロナウイルス感染拡大による生活様式の変容を、令和8年度は賃金や資材価格等の高騰に伴う工事費の上昇を前提に置いています。同様に、令和8年度Ⅲ-1の防災・減災対策は、令和4年度Ⅲ-1が河川橋りょうに、令和7年度Ⅲ-1が豪雨に対象を絞っていたのに対し、鉄道施設全体を対象にしています。建設部門の他科目・他年度の設問の並びは技術士二次試験 建設部門 過去問 — 令和元〜8年度96冊728設問の索引、同じ令和8年度の他科目の選択科目Ⅲは令和8年度 建設部門 道路 選択科目Ⅲの設問の要求事項、令和8年度 建設部門 トンネル 選択科目Ⅲの設問の要求事項にあります。
設問の型は8年でどう変わったか — 課題の語・立場・専門技術用語
8年分の(1)と(2)の指定を並べると、変化した箇所は3つです。
| 年度 | (1)の課題数の指定 | (1)で使われている語 | (1)の立場の限定 | (2)の専門技術に関する指定 |
|---|---|---|---|---|
| 令和元年度 | 指定なし(抽出し分析せよ) | 課題 | 鉄道に従事する技術者/鉄道分野の技術者 | なし(両題) |
| 令和2年度 | 指定なし(その内容を観点とともに示せ) | 課題 | 建設部門に属する鉄道技術者 | なし(両題) |
| 令和3年度 | 3つ(両題) | 課題 | 建設部門の技術者 | なし(両題) |
| 令和4年度 | 3つ(両題) | 課題 | 建設部門に属する技術者/建設部門の技術者 | なし(両題) |
| 令和5年度 | 3つ(両題) | 課題 | 建設部門の技術者/建設部門に属する技術者 | Ⅲ-1のみ(専門技術用語を用い) |
| 令和6年度 | 3つ(両題) | 課題 | Ⅲ-2のみ技術者としての立場で | あり(Ⅲ-1は専門技術・手法、Ⅲ-2は専門技術用語) |
| 令和7年度 | 3つ(両題) | 課題 | 技術者としての立場で(両題) | あり(両題・専門技術用語) |
| 令和8年度 | 3つ(両題) | 技術課題 | 技術者としての立場で(両題) | あり(両題・専門技術用語) |
第1に、技術課題という語が現れたのは令和8年度が最初です。 令和元年度から令和7年度までの14題に技術課題は1回も出てこず(すべて課題)、令和8年度の2問で計10回使われています。同じ入替は科目によって年度が違い、港湾及び空港では令和7年度が最初の年度でした。
第2に、立場の限定から建設部門の語が消えています。令和2年度から令和5年度までの8題は建設部門に属する/建設部門のという限定を(1)に置いていましたが、令和6年度Ⅲ-2以降の5題はいずれも技術者としての立場でだけです。令和6年度Ⅲ-1にはそもそも(1)に立場の句がなく、問題文のリード部分で鉄道建設分野の技術者としてと述べられていました。
第3に、専門技術に関する(2)の指定は令和5年度に入り、令和6年度以降の6題すべてに付いています。令和元年度から令和4年度までの8題には一切ありません。表現も揺れており、令和5年度Ⅲ-1は専門技術用語を用い、令和6年度Ⅲ-1は専門技術・手法を用いて、それ以外の4題は専門技術用語を交えてです。
令和7年度Ⅲ-1の(1)
令和8年度Ⅲ-1の(1)
一方、(3)の締めくくりはほとんど動いていません。
| (3)の型 | 題数 | 該当する年度・番号 |
|---|---|---|
| すべての解決策を実行しても新たに生じうるリスクと対策 | 11題 | 令和3〜4年度の4題/令和5年度Ⅲ-2/令和6〜8年度の6題 |
| 解決策に共通して新たに生じうるリスクと対策 | 4題 | 令和元年度の2題/令和2年度の2題 |
| 解決策に関連して浮かび上がってくる将来的な懸念事項と対策 | 1題 | 令和5年度Ⅲ-1 |
リスクという語は16題中15題で使われており、懸念事項に置き換わったのは令和5年度Ⅲ-1の1題だけです。 この点は科目によって大きく違い、港湾及び空港では令和5年度以降の10題がすべて懸念事項型でした。鉄道の過去問で答案の締めくくりを練習する場合、素材はほぼリスク型に揃っています。
(3)前問(2)で示した解決策に関連して浮かび上がってくる将来的な懸念事項とそれへの対策について,専門技術を踏まえた考えを示せ。
設問から答案を組み立てる手順
過去問を使うときにまずやることは、答案を書くことではなく設問の指示を漏れなく取り出すことです。令和8年度の鉄道Ⅲの2問を材料にすると、手順は次のようになります。
- (1)の主題だけで問題を選ぶ。 (2)と(3)は2問で同文なので、選択の判断材料は防災・減災対策とコスト縮減・コスト抑制のどちらで技術課題を3つ立てられるかに絞られます。
- Ⅲ-2を選ぶなら、例を先に挙げる。 Ⅲ-2の(1)はコスト縮減・コスト抑制例を挙げよから始まります。この一句に答えない答案は、指示を1つ落としています。
- 技術課題はちょうど3つに揃える。 両題とも3つの技術課題を抽出しと指定されています。2つでも4つでも指定から外れます。
- 観点を明記してから技術課題の内容を書く。 両題ともそれぞれの観点を明記したうえで、その技術課題の内容を示せという順序です。
- (2)は専門技術用語を交えて書く。 令和8年度は両題に指定があります。解決策を一般的な方針の記述で終えると、この指定に答えていません。
- (3)は(2)のすべての解決策を実行した後を前提にする。 解決策の1つだけを取り上げて残余のリスクを論じる構成は、すべての解決策を実行してもという前提と食い違います。
この6項目は、どの年度の選択科目Ⅲでも設問文から機械的に取り出せます。答案の中身を検討する前に置く確認工程です。同じ令和8年度の必須科目Ⅰとの設問の型の違いは令和8年度 建設部門 必須科目Ⅰ(Ⅰ-1・Ⅰ-2)の設問の要求事項で比較しています。
筆記のあとに来るもの — 合格発表から口頭試験へ
筆記試験の答案は返却されないため、自分が何を書いたかを再現できるのは記憶が新しいうちだけです。
令和8年度の筆記試験合格発表は11月上旬(11月4日(水)予定)、その後、令和8年12月上旬から令和9年1月中旬にかけて口頭試験が実施されます。受験申込み案内は採点結果の内容について、答案用紙の開示を含めて問合せには一切応じないとしています。11月になってから、鉄道のⅢでどちらの問題を選び、技術課題に何を挙げたかを確認する手段はありません。
口頭試験は筆記試験における記述式問題の答案及び業務経歴を踏まえて実施されると定められており、選択科目Ⅲで書いた技術課題と解決策は試験官の手元にある材料の一部になります。発表から本番までの逆算は筆記合格発表(11月4日予定)から口頭試験まで、試問事項と配点の構造は口頭試験の試問事項と配点(令和8年度)にまとめています。発表当日から本番までに何を準備するかは技術士 口頭試験 対策 — 筆記合格発表(11月4日予定)から本番までに公式資料で準備できること全部に順番どおりに並べています。
まとめ:次に取る3つの行動
- (2)と(3)の骨組みを1つ作り、(1)だけを2通り用意する。 令和8年度は2問の(2)(3)が同文でした。準備の負荷がかかるのは(1)であり、防災・減災対策とコスト縮減・コスト抑制のどちらでも観点3つを立てられるかが選択の分かれ目になります。
- リスク型の締めくくりで練習する。 鉄道Ⅲの16題のうち15題がリスク型で、懸念事項型は令和5年度Ⅲ-1の1題だけです。過去問を素材にする限り、練習量はリスク型に偏らせて構いません。
- 筆記の答案を再現したメモを、口頭試験まで保管する。 答案は開示されず、口頭試験は答案と業務経歴を踏まえて実施されます。記憶が新しいうちに書き起こしておく作業は、筆記直後にしかできません。