令和8年度の技術士第二次試験 建設部門 港湾及び空港の選択科目Ⅲは、Ⅲ-1が国際コンテナ戦略港湾の施策、Ⅲ-2が港湾・空港施設の更新を主題とし、どちらも(1)技術課題の抽出→(2)最も重要な技術課題への解決策→(3)懸念事項とその対策の3段で書かせる構成です。ただし2問の(3)は同じ文ではありません。令和8年度は、2問の(3)が違う前提に立った最初の年度です。 令和元年度から令和7年度までの7年14題は、同じ年度の2題が必ず同じ言い回しで(3)を締めくくっていました。

この記事は、令和9年度以降に港湾及び空港を選択する人と、令和8年7月の筆記試験を受けて自分の答案を振り返っている人に向けたものです。模範解答や解答例は載せません。載せるのは、設問が何を書けと指示しているかの分解と、令和元年度から令和8年度までの港湾及び空港 選択科目Ⅲ 16題を並べて数えた出題テーマ・設問形式の推移です。

根拠は日本技術士会が公表している各年度の試験問題の原文だけです。テーマ名は設問文中の語をそのまま使い、予備校の解説やまとめ記事は根拠にしていません。

令和8年度の港湾及び空港Ⅲは何を要求しているか

まず出題の指示を確認します。選択科目Ⅲは2問題のうち1問題を選び、赤色の答案用紙3枚を用いてまとめる形式です。

Ⅲ 次の2問題(Ⅲ-1,Ⅲ-2)のうち1問題を選び解答せよ。(赤色の答案用紙に解答問題番号を明記し,答案用紙3枚を用いてまとめよ。)

出典: 令和8年度技術士第二次試験問題〔建設部門〕港湾及び空港(選択科目Ⅱ・Ⅲ)(日本技術士会)

答案用紙は1枚600字なので、3枚で1,800字です。選択科目Ⅲの配点は30点、選択科目ⅡとⅢを合わせた解答時間は3時間30分(13:00〜16:30)で、この時間内にⅡの3枚とⅢの3枚の計6枚を書きます。配点と時間の内訳は技術士二次試験の科目構成と配点・合否決定基準、答案用紙そのものの規定は筆記試験の答案用紙 — 600字の規定と合計9枚の使い方にまとめています。

Ⅲ-1(国際コンテナ戦略港湾の施策)が指示していること

 Ⅲ-1 港湾の国際コンテナターミナルは,製品や半製品などの物流を支える国際的な拠点として,我が国の経済・産業活動を支える重要なインフラである。 (中略) (1)国際コンテナ戦略港湾の施策について,技術者として多面的な観点から,あなたの選択科目に関わる技術課題を3つ抽出し,それぞれの観点を明記したうえで,その技術課題の内容を示せ。(※)   (※)解答の際には必ず観点を述べてから技術課題を示せ。 (2)前問(1)で抽出した技術課題のうち最も重要と考える技術課題を1つ挙げ,その技術課題に対する複数の解決策を示せ。 (3)前問(2)で示したすべての解決策を実行しても新たに生じうる懸念事項とそれへの対策について,専門技術を踏まえた考えを示せ。

出典: 令和8年度技術士第二次試験問題〔建設部門〕港湾及び空港(選択科目Ⅱ・Ⅲ)(日本技術士会)

小問ごとに、何をいくつ書けと言われているかを取り出すと次のようになります。

小問書けと指示されているもの数の指定見落としやすい条件
(1)観点と、その観点における技術課題の内容ちょうど3つ抽出する技術課題はあなたの選択科目に関わるものに限定される/(※)により観点を先に述べる順序が指定されている
(2)最も重要と考える技術課題1つと、それに対する解決策技術課題は1つ、解決策は複数専門技術用語を交えよという指定はない/解決策の段階も限定されていない
(3)すべての解決策を実行しても新たに生じうる懸念事項と、その対策指定なし前提は(2)のすべての解決策を実行した状態/専門技術を踏まえた考えを示す

この設問には、港湾及び空港という科目名にもかかわらず空港の語が一度も現れません。主題は港湾の国際コンテナターミナルと国際コンテナ戦略港湾に置かれており、設問文から空港側に広げる手がかりは取れません。

Ⅲ-2(港湾・空港施設の更新)が指示していること

 Ⅲ-2 昨年1月に埼玉県八潮市で発生した大規模な下水道管の損壊に伴う道路陥没事故は,インフラの老朽化対策の重要性を社会に再認識させたところである。 (中略) ただし,港湾と空港の両方について答えてもどちらか一方について答えてもかまわない。 (1)港湾・空港施設の更新(改廃を含む)を的確に進めるため,技術者としての立場で多面的な観点から,あなたの選択科目に関わる技術課題を3つ抽出し,それぞれの観点を明記したうえで,その技術課題の内容を示せ。(※)   (※)解答の際には必ず観点を述べてから技術課題を示せ。 (2)前問(1)で抽出した技術課題のうち最も重要と考える技術課題を1つ挙げ,その技術課題に対する複数の解決策を示せ。 (3)前問(2)で示した解決策に関連して新たに浮かび上がってくる将来的な懸念事項とそれへの対策について,専門技術を踏まえた考えを示せ。

出典: 令和8年度技術士第二次試験問題〔建設部門〕港湾及び空港(選択科目Ⅱ・Ⅲ)(日本技術士会)

2問を並べると、違いは(3)と、対象施設の広さに集約されます。

比較する点Ⅲ-1Ⅲ-2
対象港湾の国際コンテナターミナル(設問文に空港の語なし)港湾と空港の両方でも一方でも可
(1)の指定技術課題3つ・あなたの選択科目に関わるもの同じ
(2)で書く要素技術課題1つ+解決策(複数)同じ
(3)の前提すべての解決策を実行しても新たに生じうる懸念事項解決策に関連して新たに浮かび上がってくる将来的な懸念事項

(3)の前提が2問で食い違うのは、令和元年度以降の16題で令和8年度が初めてです。 Ⅲ-1は解決策を全部実行した後になお残るものを問い、Ⅲ-2は解決策に関連して将来的に浮かび上がるものを問います。前者は現在の残余、後者は時間の経過という違いがあり、Ⅲ-1とⅢ-2で(3)の骨組みを使い回すことはできません。

答案用紙3枚・1,800字に、小問3つをどう割り振るか

公表問題にも受験申込み案内にも小問ごとの字数指定はありません。判断材料になるのは、令和8年度のⅢ-1・Ⅲ-2が要求している要素の数だけです。

小問要求されている要素の数
(1) 両題観点3つ+技術課題の内容3つ(観点を述べてから技術課題を示す順序つき)
(2) 両題技術課題1つ+解決策は複数(下限は2つ)
(3) Ⅲ-1すべての解決策を実行しても新たに生じうる懸念事項+その対策(数の指定なし)
(3) Ⅲ-2解決策に関連して新たに浮かび上がってくる将来的な懸念事項+その対策(数の指定なし)

1,800字を3つの小問で単純に等分すると1問あたり600字です。(1)は観点と技術課題の組を3つ書くので、600字で3組なら1組200字しか使えません。しかも(1)には観点を先に述べる順序の指定があり、観点の説明と技術課題の内容の両方を200字に収めることになります。配分そのものは受験者に委ねられており、正解の比率は公表されていません。

令和元〜8年度の港湾及び空港Ⅲ 16題は何を出してきたか

この科目は全年度で各2問題なので、8年で16題です。テーマ名は設問文中の語をそのまま使いました。

年度番号出題テーマ(設問文中の語)
令和元年度Ⅲ-1港湾及び空港のインフラシステム輸出
令和元年度Ⅲ-2ライフサイクルコストを縮減するための課題
令和2年度Ⅲ-1訪日旅行の振興によって国民経済的便益を増大させていく
令和2年度Ⅲ-2工事の安全性向上や安全管理
令和3年度Ⅲ-1農産品やその加工品の輸出拡大に向けた取組
令和3年度Ⅲ-2供用段階での機能を果たす中においての脱炭素化の取組
令和4年度Ⅲ-1国際の物流・人流に着目した地方の経済振興
令和4年度Ⅲ-2護岸等の耐震性調査・耐震改良
令和5年度Ⅲ-1グローバルサプライチェーンの最適化に貢献する国際物流
令和5年度Ⅲ-2工事の生産性を向上させる技術の改善や高度化
令和6年度Ⅲ-1物流の担い手不足に対応した物流機能の強化
令和6年度Ⅲ-2気候変化に伴う被害の発生を防いでいくための適応策
令和7年度Ⅲ-1港湾・空港工事における安全対策
令和7年度Ⅲ-2ブルーインフラの実装
令和8年度Ⅲ-1国際コンテナ戦略港湾の施策
令和8年度Ⅲ-2港湾・空港施設の更新(改廃を含む)

主題の系統で数えると、番号ごとの偏りがはっきり出ます。

主題の系統題数該当する年度・番号
国際物流・人流と地域経済7題令和元年度Ⅲ-1/令和2年度Ⅲ-1/令和3年度Ⅲ-1/令和4年度Ⅲ-1/令和5年度Ⅲ-1/令和6年度Ⅲ-1/令和8年度Ⅲ-1
施設の維持・更新・耐震3題令和元年度Ⅲ-2/令和4年度Ⅲ-2/令和8年度Ⅲ-2
工事の安全・生産性3題令和2年度Ⅲ-2/令和5年度Ⅲ-2/令和7年度Ⅲ-1
脱炭素・気候変動・自然共生3題令和3年度Ⅲ-2/令和6年度Ⅲ-2/令和7年度Ⅲ-2

8年のうち7年で、Ⅲ-1は国際物流・人流と地域経済の系統でした。 例外は令和7年度で、この年だけⅢ-1が港湾・空港工事における安全対策に振られています。逆に、物流・人流の系統がⅢ-2に置かれた年度は8年間で1つもありません。次年度に何が出るかは公表されておらず、この表から出題を予想することはできません。

もう1つ、対象を港湾か空港かに絞る扱いも年度で揺れています。

扱い題数該当する年度・番号
港湾と空港の両方でも一方でもよいと明記3題令和2年度Ⅲ-2/令和7年度Ⅲ-1/令和8年度Ⅲ-2
設問文に空港の語がない(実質的に港湾のみ)2題令和7年度Ⅲ-2/令和8年度Ⅲ-1
特定の取組を除外する条件つき3題令和3年度Ⅲ-2/令和4年度Ⅲ-1/令和5年度Ⅲ-1

除外条件が付いた3題は、令和3年度Ⅲ-2が維持・更新工事、令和4年度Ⅲ-1がDX・地球温暖化対策・自然災害対策、令和5年度Ⅲ-1が大規模災害対策・施設の老朽化対策をそれぞれ対象から外しています。令和6年度以降の8題に除外条件は付いていません。建設部門の他科目・他年度の設問の並びは技術士二次試験 建設部門 過去問 — 令和元〜8年度96冊728設問の索引、同じ令和8年度の他科目の選択科目Ⅲは令和8年度 建設部門 道路 選択科目Ⅲの設問の要求事項、令和8年度 建設部門 トンネル 選択科目Ⅲの設問の要求事項にあります。

令和7年度から何が変わったか — 締めくくりの型と注記

港湾及び空港Ⅲの8年分の(3)を並べると、4つの型に分かれます。

(3)の型題数該当する年度・番号
解決策に共通して新たに生じうるリスクと対策4題令和元年度の2題/令和2年度の2題
すべての解決策を実行しても新たに生じうるリスクと対策4題令和3年度の2題/令和4年度の2題
解決策に関連して新たに浮かび上がってくる懸念事項と対策7題令和5年度の2題/令和6年度の2題/令和7年度の2題/令和8年度Ⅲ-2
すべての解決策を実行しても新たに生じうる懸念事項と対策1題令和8年度Ⅲ-1

読み取れることは2つあります。第1に、リスクという語を使う型は令和4年度で終わり、令和5年度以降の10題はすべて懸念事項に置き換わっています(令和5年度Ⅲ-2だけは将来的なが付かず、単に懸念事項です)。第2に、令和8年度Ⅲ-1の型は16題でこの1題だけです。すべての解決策を実行してもという令和3・4年度の前提と、懸念事項という令和5年度以降の語を組み合わせた形になっています。

令和7年度Ⅲ-1の(3)

前問(2)で示した解決策に関連して新たに浮かび上がってくる将来的な懸念事項とそれへの対策について,専門技術を踏まえた考えを示せ。

令和8年度Ⅲ-1の(3)

前問(2)で示したすべての解決策を実行しても新たに生じうる懸念事項とそれへの対策について,専門技術を踏まえた考えを示せ。

もう1つ、令和7年度に付いていて令和8年度で消えた注記があります。令和7年度は2題とも、(1)の直後に技術課題の範囲を広げる但し書きを置いていました。

   なお,本設問における「技術課題」には,「港湾・空港工事における安全対策」における制度上,管理上等の課題も含まれるものとする。

出典: 令和7年度技術士第二次試験問題〔建設部門〕港湾及び空港(選択科目Ⅱ・Ⅲ)(日本技術士会)

令和8年度の2題にこの注記はありません。代わりに入ったのが、あなたの選択科目に関わる技術課題という限定です。この語は16題のうち令和8年度の2題にしか現れません。

設問の型は8年でどう変わったか — 課題数・語・専門技術用語

残る3つの指定も数えられます。

年度(1)の課題数の指定(1)で使われている語(2)の専門技術用語の指定
令和元年度指定なし(抽出し分析せよ)課題なし(両題)
令和2年度指定なし(その内容を観点とともに示せ)課題なし(両題)
令和3年度3つ(両題)課題なし(両題)
令和4年度3つ(両題)課題あり(両題)
令和5年度3つ(両題)課題Ⅲ-1のみ
令和6年度3つ(両題)課題あり(両題)
令和7年度3つ(両題)技術課題なし(両題)
令和8年度3つ(両題)技術課題なし(両題)

第1に、課題という語が技術課題に変わったのは令和7年度です。令和元年度から令和6年度までの12題に技術課題は1回も現れず、令和7年度の2問で計14回、令和8年度の2問で計12回使われています。同じ入替は科目によって年度が違い、トンネルでは令和8年度が最初の年度でした。

第2に、この科目は令和3年度以降の12題で課題の数を常にちょうど3つと指定しており、3つ以上という書き方は16題で一度も使われていません。数を指定しない出題は令和元年度・令和2年度の4題だけです。令和元年度Ⅲ-1にはさらに、主要な効果を2つ挙げたうえでそれぞれの効果を発揮するための課題を抽出させる二段の指定がありました。

第3に、専門技術用語を交えて示せという(2)の指定は令和4年度に入り、令和6年度まで3年6題のうち5題に付いていましたが、令和7年度と令和8年度の4題ではすべて消えています。令和6年度Ⅲ-1の原文は次のとおりです。

 (2)前問(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ,その課題に対する複数の解決策を,専門技術用語を交えて示せ。

出典: 令和6年度技術士第二次試験問題〔建設部門〕港湾及び空港(選択科目Ⅱ・Ⅲ)(日本技術士会)

指定が消えたことは、専門技術用語を使ってはならないという意味ではありません。設問文が要求している事項として数えられなくなった、というだけです。

設問から答案を組み立てる手順

過去問を使うときにまずやることは、答案を書くことではなく設問の指示を漏れなく取り出すことです。令和8年度の港湾及び空港Ⅲの2問を材料にすると、手順は次のようになります。

  1. 対象施設の広さを先に確認して問題を選ぶ。 Ⅲ-1は港湾の国際コンテナターミナルが主題で設問文に空港の語がなく、Ⅲ-2は港湾と空港の両方でも一方でもかまいません。空港側の実務が中心の人にとって、選べる問題は実質的に絞られます。
  2. 技術課題はちょうど3つに揃える。 両題とも3つ抽出しと指定されています。2つでも4つでも指定から外れます。
  3. 観点を先に述べてから技術課題を書く。 両題に(※)で順序が指定されています。技術課題を先に並べて観点を後から補う構成は、この指定に反します。
  4. 抽出する技術課題を自分の選択科目の範囲に収める。 両題ともあなたの選択科目に関わる技術課題と限定しています。港湾及び空港の技術から離れた一般論は、この限定を外れます。
  5. (2)で選ぶ技術課題は(1)の中から選ぶ。 両題とも前問(1)で抽出した技術課題のうち、と限定しています。
  6. (3)の前提を問題ごとに切り替える。 Ⅲ-1はすべての解決策を実行した後、Ⅲ-2は解決策に関連して将来的に浮かび上がるものです。片方の型で書いた答案の骨組みをもう片方に流用すると前提がずれます。

この6項目は、どの年度の選択科目Ⅲでも設問文から機械的に取り出せます。答案の中身を検討する前に置く確認工程です。同じ令和8年度の必須科目Ⅰとの設問の型の違いは令和8年度 建設部門 必須科目Ⅰ(Ⅰ-1・Ⅰ-2)の設問の要求事項で比較しています。

筆記のあとに来るもの — 合格発表から口頭試験へ

筆記試験の答案は返却されないため、自分が何を書いたかを再現できるのは記憶が新しいうちだけです。

令和8年度の筆記試験合格発表は11月上旬(11月4日(水)予定)、その後、令和8年12月上旬から令和9年1月中旬にかけて口頭試験が実施されます。受験申込み案内は採点結果の内容について、答案用紙の開示を含めて問合せには一切応じないとしています。11月になってから、港湾及び空港のⅢでどちらの問題を選び、技術課題に何を挙げたかを確認する手段はありません。

口頭試験は筆記試験における記述式問題の答案及び業務経歴を踏まえて実施されると定められており、選択科目Ⅲで書いた技術課題と解決策は試験官の手元にある材料の一部になります。発表から本番までの逆算は筆記合格発表(11月4日予定)から口頭試験まで、試問事項と配点の構造は口頭試験の試問事項と配点(令和8年度)にまとめています。発表当日から本番までに何を準備するかは技術士 口頭試験 対策 — 筆記合格発表(11月4日予定)から本番までに公式資料で準備できること全部に順番どおりに並べています。

まとめ:次に取る3つの行動